世界の名作家具|愛され続ける理由と一生モノとの出会い方
家具には、何十年経っても愛され続ける「名作」と呼ばれるものがあります。
シンプルで美しいフォルム、素材や職人のクラフトマンシップに込められた思い。
それらは単なるインテリアではなく、暮らしの質を支える“道具”として生まれたものです。
今回は、名作と呼ばれる家具の共通点や、名作家具のある暮らしの魅力に迫っていきたいと思います。
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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名作家具とは何か
名作家具と定義されるモノの中には、共通点があります。
■機能と美しさを両立している
高いデザイン性と機能性を兼ね揃えた名作家具は、長きに渡って愛されています。
人間工学が自然に落とし込まれたデザイン。
いつまでも廃れない、洗練されたフォルム。
それらのバランスが絶妙に保たれた名作は、暮らしの中にそっと寄り添い続けます。
■経年が生み出す魅力
木、スチール、アイアン、籐…。
名作家具は、長い歳月を経ても使い続けることのできる素材でつくられています。
むしろ、丁寧に手入れされてきたアイテムは“ヴィンテージ”として、現行品以上の価値を持つことも。
■デザイナーの思想が宿るデザイン
名作家具は、デザイナーの思想や、つくられた年代の時代背景が色濃く現れています。
その歴史や背景に思いを馳せることでより愛着が湧きます。

空間との相性で選ぶ名作家具
名作家具は、それ単体で完成された存在でありながら、空間の中に置かれてはじめて本来の美しさを発揮します。
そのため、名作家具をリノベーション後の空間で楽しむためには、“相性”を軸に家具を選ぶのがおすすめ。
同じデザイナーの家具でまとめるのも、いろいろなデザイナーの作品の中から、素材で統一感を出すのも間違いではありません。
インテリアに正解はありません。
ご自身が最も心地よく感じる相性の組み合わせで、自由に楽しむことが大切です。
実例で見る、世界の名作家具
ここからは、nuリノベーション(以下、nu)でリノベーションをしたお客様の実例を用いて、名作家具を上手に空間に取り入れるコツをご紹介します。
①空間の温度に合わせる | スチールの静謐さが生むノイズレス
・リノベーション事例:「SIMPLE×seamless」(東京都渋谷区)

<SELECTED MASTERPIECE>
■PK4(ポール・ケアホルム)
■セブンチェア(アルネ・ヤコブセン)
リノベーションを機に、すっかり名作家具の虜になったというHさん。
ダイニングにはアルネ・ヤコブセンの名作<セブンチェア>を合わせています。
リビングのラウンジチェアは、1952年にポール・ケアホルムがデザインしたPK4。
視線を遮らないスチールパイプと麻ひもの軽やかなフォルムは、ノイズレスなH邸にぴったりのデザインです。
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Hさんのコメント
ソファを置く案もありましたが、余白がたっぷりある感じを維持したいと夫婦で話し合い、今の形に落ち着きました。
“このチェアに腰掛けて、読書をしている自分が好き”。
そんな気持ちにさせてくれる空間です。
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今後は読書灯の下に、ヤコブセンのSERIESE3000を置く予定。
数ヶ月前に注文し、到着を待ち侘びているといいます。
家具選びのポイント
Hさんの判断基準は、ノイズレスにつくり上げた空間に合わせる素材感。
スチール脚で家具に統一感を持たせ、無機質になりすぎないよう、ファブリックアイテムをバランスよく合わせているのが印象的です。
②国やデザイナーに縛られない | 心地よい“ゆらぎ”を感じるインテリア
・リノベーション事例:「seamless×KITCHEN」(神奈川県川崎市)

<SELECTED MASTERPIECE>
■GE290(ハンス・J・ウェグナー)
■Ionコーヒーテーブル(コンスタンティン・グルチッチ)
■A-B01ベンチ(芦沢啓治)
■Dinetteチェア(ハンス・オルセン)
リノベーション前から、様々な名作家具と暮らしていたという家具好きのKさん。
ウェグナーの名作ソファ<GE290>などはリノベーション空間に合わせて購入しました。

芦沢氏による<A-B01>ベンチはアートを飾るシェルフとして使うなど、家具とフレキシブルに向き合うKさんのスタイルを感じます。

ダイニングの椅子は、ハンス・オルセンの代表作<Dinette>。
同じシリーズのラウンドテーブルにすっぽり収まるようデザインされていますが、Kさんはカイ・クリスチャンのダイニングテーブルと合わせています。
家具選びのポイント
家具好きならではのミックステイストが効いているK邸。
さまざまなデザイナーの家具を組み合わせたり、名作の中に近代の作品を取り入れたり。
国や時代の異なる家具が混在しながらも素材やトーンが調和していることで、意図された“ゆらぎ”が心地よいリズムを生み出しています。
ちなみに、2000年に発表された近代の名作として多くの人に愛される照明<MAYDAY>も、グルチッチの作品。
印象の異なるアイテムでも、意外と同じデザイナーだったことに気がつくと、家具の見え方が変わってくるような気がしますね。

③心酔するアアルトの世界観
・リノベーション事例:「Dear Alvar」(東京都江東区)

<SELECTED MASTERPIECE>
■ドムスチェア(イルマリ・タピオヴァーラ)
■スツール60(アルヴァ・アアルト)
■ゴールデン・ベル(アルヴァ・アアルト)
■北欧ヴィンテージチェスト
内装や家具のイメージを探す中で、好みのものはすべてアアルト関連であることに気づいたSさん。
そこからすっかりアアルトのファンになり、アアルトの自邸にインスパイアされた空間をつくり上げました。
ダイニングの<ドムスチェア>は、かつてアアルトの元で経験を積んだフィンランドのデザイナー・タピオヴァーラによるもの。

また、寝室のペンダントライトはアアルトの名作<ゴールデン・ベル>。
アアルトの家具が持つ有機的なフォルムと柔らかな光の相性が、空間全体にやさしい陰影を生み出しています。
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Sさんのコメント
中学生のころに映画『かもめ食堂』を見て、ずっと北欧の雰囲気にあこがれていました。劇中でも使われていたゴールデンベルを、ようやく自宅に迎え入れることができて、本当にうれしいです。
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現代の視点で再解釈される、名作家具
名作家具は、時代を超えて愛され、受け継がれてきました。
その一方で、現代では異なる分野のデザイナーやアーティストとの協働によって、新たな解釈が加えられることも増えています。
既存の価値を守るだけでなく、異なる視点を重ねることで更新されていく。
今の時代ならではの感性が宿る名作を迎えてみることも、名作家具の楽しみ方の一つといえます。
■S64 カンチレバーチェア(マルセル・ブロイヤー)
バウハウスを象徴する〈S64〉をベースに、ファッションデザイナーのジル・サンダーが再解釈したコレクション。
装飾を削ぎ落とし、素材とディテールの精度で魅せるその佇まいは、彼女の美学とも通じる静かな緊張感をまとっています。

スツール60(アルヴァ・アアルト)
アアルトの名作〈スツール60〉は、現代のさまざまなアーティストやブランドによって、幾度も新たな解釈が加えられてきました。
左は長坂常による《カラリン》、右はマリメッコとのコラボレーションによるシリーズ。
極限まで削ぎ落とされたシンプルな構造だからこそ、多様な表現を受け止めながら、その個性を引き立てる余白を持っています。

名作家具との上手な出会い方
名作家具を暮らしに取り入れる際には、デザインの好みだけではなく、さまざまな視点からその家具と向き合うことが大切です。
①空間との相性を考える
家具は単体で完結するものではなく、空間の中でその輪郭が引き立つもの。
素材やスケール感、視線の抜けなどが空間とどう関係するかを吟味しましょう。
すでに持っている家具との相性も含めて、全体のバランスを捉えながら選ぶことが大切です。
②納期、設置方法も確認
名作家具の中には、受注生産で納期に時間を要するものや、設置に工事を伴うものも少なくありません。
家具選びをリノベーションと切り離さず、空間デザインの一部として計画段階から並行して検討することがおすすめ。
③メンテナンス性も考慮する
長く使い続けるためには、メンテナンス体制や流通の確認も重要です。
国内に正規代理店があるか、修理や張り替えが可能か。
あらかじめ把握しておくことで、安心して使い続けることができます。
名作家具と暮らすという選択
家具は鑑賞するものではなく、日常の中で使われるもの。
どんな空間で、どんな時間を過ごしたいのかによって、選ぶべき家具は変わります。
読書をする時間、来客と過ごす時間、家族の時間。
暮らしのシーンを思い描くことで、その空間にふさわしい家具が見えてきます。
また、家具選びもリノベーションと同じ。
”どんな価値基準で、何を選ぶか”という判断のプロセスも含めて、暮らしを豊かにする体験価値となります。
今まで家具が好きだった方も、これから購入を検討している方も、ぜひ愛着のわく名作を見つけてください。
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