アートのある暮らし
一枚の絵や写真を飾るだけで、部屋の雰囲気はぐっと変わります。
アートは住まいを彩るインテリアであると同時に、自分らしさを映す鏡のような存在。
今回は「アートのある暮らし」をテーマに、リノベーション後の空間を彩るアートのスタイリングをご紹介します。

物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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・暮らしとアートの共存のカタチ
※リノベーション事例「SIMPLE×seamless」(東京都目黒区)
N邸を語る上で外すことができないのは、白をベースとした静謐な空間を彩るアートの数々。
中でもダイニング横の棚や玄関に立てかけられた動物モチーフの絵は、銅板画家・村上早さんの作品で、ご主人がお父様から譲り受けたモノだそう。
「父が収集していた作品を、私や兄姉が少しずつ継承していて。実家にもまだまだたくさんあるんですけどね(笑)。安易に直視できない怖さもあるモチーフなので、他の絵を重ねたり布をかけて飾っています」。
村上さんは「心の傷」を銅版に刻むという制作プロセスが特徴で、生きていく中で生まれる様々な思いを表現した作品だからこそ、空間に置いたときの迫力もひとしお。
重ね方や布のあしらいといった工夫から、暮らしとアートの共存のカタチが見えてきました。
・アパレルをアートに昇華
※リノベーション事例「ニュアンス×プレーン」(東京都江東区)
S邸では、廊下のギャラリースペースにロナン・ブルレックとイッセイミヤケのコラボレーションによるシャツを額装して飾っています。
洋服という身近なアイテムでありながら、フレームに収めることで一枚のアートピースに。
ドローイングの自由な線の表情が、日常の空間に心地よいリズムを与えてくれます。
「観て楽しんだあとは、もちろん実際に着る予定です!」とSさん。
日常とアートの境界を軽やかに行き来する発想が、暮らしに新しいスタイルをもたらしています。
・茶室×墨アート。床の間の無限の可能性
※リノベーション事例「THE JAPANDI」(東京都世田谷区)
畳・塗壁・床の間という茶室の要素に、ガラスとブラックモールテックスを加えてモダンに昇華させたこちらの空間。
伝統と現代が交差するその中心で、視線を奪うのはやはり壁に掛けられたアート作品です。
繊細なタッチで描かれた、4枚の女性のイラスト。
手がけられたのは、イラストレーターとして活躍されている山口奈津さんで、幼い頃から学んでいた書道を通じて“墨の滲み”の魅力に気づき、墨を用いて絵を描くことを始めたんだとか。
額装された枠の外側も墨を用いて黒く塗装されており、漆喰の壁との相性も抜群です。
これまで床の間といえば、掛け軸や日本の風景を描いた水墨画が定番とされてきました。
けれど、作品が持つ温度感や画材の表情を手がかりに選べば、現代的なアートであっても静謐な和の空間に深く呼応する。そんな新しい調和を感じさせるスタイリングです。
「アートのある暮らし」の特集、楽しんでいただけたでしょうか。
アートは特別なものであると同時に、日常に自然に馴染ませることもできます。
好きな作品をどこに、どんなふうに飾るのか。
その選択が住まいを自分らしくしてくれる──。そんなヒントになればうれしいです。