築50年でも大丈夫?|リノベ向き中古マンションの見極め方
物件探しの条件として代表的なものの一つが、築年数。
今までは「古い物件は何となく不安」という声をよく耳にしていましたが、近年では立地や広さ、空間づくりにおける自由度の高さなどを重視して、築年数の古い物件を選ぶ人が増えています。
今回は、築50年超のマンションリノベーション(リノベ)について、あらかじめ押さえておくべき知識やその魅力を解説します。

物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・築40年と築50年の違い
└ 耐震基準の基礎知識
└ 新耐震の見極め方
・あえて築古を選ぶメリット
・築古マンションのチェックポイント
・築50年超えマンションのリノベ事例3選
築40年と築50年の違い
■耐震基準の基礎知識
築年数の古いマンションを購入する際に安全性の面でしっかり確認したいのが、耐震基準。
耐震基準とは、地震などの大きな災害に備え、建物を建てる際に最低限満たさなくてはならない基準のことで、建築基準法によって定められています。
日本で「新耐震基準」が導入されたのは1981年6月1日のこと。それまでは震度5の揺れに耐えられる基準だったものを、新耐震基準では震度7の大きな地震でも建物が全壊しないことが基準となりました。
2025年現在、当時建てられた物件は築44年前後。築40年を超えていても、新耐震基準へ移行した後に建てられたマンションが多く存在する時代になりました。
一方で、築50年を超えると旧耐震の可能性が高いため、購入の際にはどちらの基準に沿って建てられているのか、改修が行われているかなどをチェックし、見極めることが重要となります。
■新耐震の見極め方
新耐震基準の導入は先述の通り1981年6月1日ですが、“築年月がその日付以降の物件が必ずしも新耐震”というわけではありません。
その理由は、マンションの確認申請から実際にマンションが竣工するまでに1年〜1年半ほどのタイムラグがあるから。
例えば1981年8月に竣工したマンションだったとしても、設計図面の確認申請が1981年5月31日以前であれば旧耐震基準のルールに則って申請が受理されるため、新耐震の基準を満たしていない可能性があります。
耐震基準の切り替え時期にあたる築44年前後のマンションの購入を検討する際は、どちらの建築基準に則って建てられた物件なのかを事前に確認しておくことがおすすめです。
旧耐震基準の頃に建てられた物件にも、新耐震基準と同等の強度・建築方法で建てられた建物もあります。
そういった物件は、専門機関で審査を行うことで“新耐震基準の条件を満たしている”と認定してもらうことができ、認定されたマンションには「耐震基準適合証明書」が発行されます。
一般的には、物件が販売される際に仲介を行う業者が事前に証明書を発行しているケースが多いので、物件選びの際のチェックポイントとして、証明書の有無を確認しておくと良さそうですね。
あえて築古を選ぶメリット
続いて、築40年〜50年超の築古マンションを購入するメリットをご紹介します。
魅力①:ゆとりあるマンション設計で、自由度の高いリノベが可能
40〜50年前は、現在と比較して土地価格が低く、広さにも余裕があったため、専有面積や共用廊下にゆとりを持たせたマンション設計が多く見られます。
また天井高が高く間取りの自由度も高いため、リノベーション向きの物件が多いことも魅力的。
魅力②:ヴィンテージマンションならではの重厚感ある意匠
タイル張りの外観や大理石風のエントランス、重厚な鉄製の手すりなど、築古のマンションの中には共用部の意匠、素材にこだわった物件もあり、近年ヴィンテージマンションとして再評価されています。
魅力③:立地条件の良さ・住みたい街に住める
駅近や文教地区、公園隣接エリアなど、再開発以前の段階で建てられたマンションは立地条件の良さも魅力的です。
このように、マンションの外観や共用部の空気感、立地条件など、リノベーションで変えることのできない部分に価値を見出して物件を選ぶという選択肢に、近年注目が集まっています。
築古マンションのチェックポイント
ここからは、築年数が古いマンションの購入を検討されるお客様が実際に不安に感じているポイントと、リノベーションに精通したnuリノベーション(以下、nu)のアドバイザーの目線からのチェック方法を4つにまとめています。
築40年、築50年の中古マンションの購入を検討される際には、積極的に確認するようにしましょう。
①共有部の古さ
Q. 築年数が古いと、セキュリティ面や共用部分の劣化が気になります。
A.
共用設備は大規模修繕などでアップデートされている可能性も!
築年数の古いマンションで不安視されることの多いセキュリティ面ですが、モニター付きインターホンへの交換や、エントランスへのオートロックの導入など、共用設備をアップデートしているマンションも多くあります。
築年数のみで判断せず、現在の状態で見極めるのがポイントです。
②管理・修繕面での不安
Q. 築年数が古い場合、管理状態や修繕計画の有無、マンションの財政状況も気になります。
A.
内見の段階から、アドバイザーがしっかり確認。
修繕計画書や修繕費の積立状況など、事前に確認できる情報はアドバイザーが細かくチェック。
実際に現地を訪れた際には共用部の清掃状態や設備の故障がないかどうかなど、長く安心して住むことができるマンションかどうかを、しっかりと見極めてアドバイスします。
③構造・素材の安全性
Q. アスベストなど、古い物件ならではの建材が使われていないか不安…。
A.
内見時に、可能な限り目視でチェック!
ユニットバスやパイプスペースに設置されている点検口から、可能な限りマンションの構造をチェック。アスベストや雨漏りの有無などを可能な限り目視で確認します。
特に、壁や天井の躯体現しを検討している場合は、躯体面の状態によって仕上がりのイメージが大きく左右されるため、事前に希望を伝えておくと良いでしょう。
④資産価値や将来性
Q. 築年数の古い物件を購入して、将来的に売却することはできる?
A.
売却時に影響しやすいのは、築年数よりも立地や管理状態のよさ。
利便性の高いエリアや、ヴィンテージマンションとしてネームバリューのあるマンションは、将来的に見ても安定した資産価値を持ち続けるケースも多くあります。
また、nuではリノベーション時の図面や仕上げ表など住宅履歴をしっかりと保管していますので、売却の際には付加価値をもたせることができます。
築40年・築50年のマンションリノベ事例3選
CASE1 | 【築50年】一目惚れしたテラコッタ色で彩る
・リノベーション事例:「terracotta×KITCHEN」(東京都世田谷区)
閑静な住宅街に佇む、1973年築の中古マンションを購入したKさん。
物件を初めて訪れた際に、テラコッタ色のタイルが貼られたマンションの外観や緑が豊かなエントランスの雰囲気に一目惚れしたのだそう。
そんなKさんの思いを受け、設計デザイナーは内装にもテラコッタ色をアクセントとして大胆に取り込むことを提案。
Kさん:このマンションの外観に一目惚れしたという、私たちの物件購入へ至った経緯をデザインに組み込んでくださったそうで。『すごく素敵。さすがプロだ!』と感動しました。プランも色使いも当初の方向性と全然違いましたが、ほぼ即決でした。
テラコッタ色のタイルや塗装で仕上げた造作キッチンは、まさにK邸の顔と言える存在感。
キッチンと反対色で、目地をテラコッタ色にしたという遊び心のある造作洗面台もお気に入りなのだそう。
CASE2 |【築60年】馴染みある街での出合いに運命を感じて
・リノベーション事例:「SIMPLE×seamless」(東京都目黒区)
リノベーションと同じくらいマンション自体のデザインや雰囲気も大切にしたいと考えていたと言うNさん。
時間をかけて臨んだ物件探しの末に購入したのは、1963年築のヴィンテージマンションでした。
昭和・平成・令和と3つの時代を見つめてきた歴史の長い物件。
購入の決め手となったのは、時を重ねて深まる“物件への愛”だったそう。
Nさん:もちろん、耐震性能の面などは夫婦で話し合いました。でも、愛されて年を重ねていったモノって、ただ古くなっていくモノとは違うんですよね。この物件も同じで、古さを超えるこの物件の良さがあると確信しました。今も、その決断に後悔はないですね。
既存の間取りを活かした回遊的な間取りは、愛犬・ムギちゃんも大満足。
元気に家の中を駆け回り、新しいこの家での暮らしを心から楽しんでいるそうです。
CASE3 | 【築41年】憧れのリバービューを愉しむ暮らし
・リノベーション事例:「ととのい」(東京都江東区)
1981年4月築のマンションを購入し、リノベーション(リノベ)をして暮らすK夫妻。
リバービューに憧れていたという奥様の要望通り、川沿いに位置する物件を購入しました。
築年数が古いものの、購入に際してはメリット・デメリットなどをアドバイザーから教えてもらえたことで、安心して購入に踏み切ることができたと言います。
躯体現しの壁と天井はベージュで塗装。よく見ると躯体の継ぎ目や角などに経年劣化が見られますが、このハードな質感をデザインとして楽しんでいるK邸。
新たに設置した間仕切り壁は曲がり角をアール状にすることで、躯体のラフな質感が和らぎ、やさしい空気感を纏った空間に仕上がっています。
K邸を語る上で外せない全長約6mの壁付けキッチンは造作で創り上げたオリジナルデザイン。
排気ダクトや給排水の管もリノベーション(リノベ)に伴って一新しているため、安心して長く使っていただくことができます。
最後に
古くても、良いものを慎重に選んでいくことで安心して暮らせる自分らしい空間を手に入れることが可能です。
購入してから失敗のないように、マンション全体を俯瞰してチェックできるよう予備知識をしっかりと持って、理想の物件探しを楽しんでくださいね。
また、築年数の古い物件で思い切りリノベーションを愉しみたいのであれば、物件探しの段階からリノベのプロの目線で物件をチェックすることも重要です。
nuでは物件購入前の内見同行なども行っておりますので、お気軽にご相談ください。