部屋の印象は床で9割決まる?空間にあった床材の選び方
インテリアよりももっと部屋全体の印象を左右するのは、実は床材。今回は代表的な床材の種類とそれぞれの特徴を、実例を交えてご紹介します。
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・床材の種類
・【フローリング】無垢と複合
・【タイル】磁器質タイルとPタイル
・【左官仕上げ】モルタルとモールテックス
・【カーペット】
・個性いろいろ!床材で見る5つのリノベーションアイデア
床材の種類
まずは、代表的な床材の種類を4つご紹介します。
フローリング
言わずと知れたメジャーな床材で、細長くカットされた木材を並べてつくる床のこと。大きく分けて「無垢フローリング」と「複合フローリング」の2種類があります。
タイル
耐久性に優れているため、一般的に水回りに用いられることが多い素材。最近ではLDKなどの居住スペースに採用するケースも増えている、注目の素材。
左官
リノベーションで根強い人気がある床の仕上げ素材「モルタル」。近年ではコンクリートに近い風合いを出せる「モールテックス」も登場し、居住スペースの床材としてより取り入れやすくなりました。
カーペット
クッション性があり、防音性や衝撃吸収性に優れたカーペットは子供部屋やくつろぎスペースの床材にぴったり。
次の章からは、一つ一つの床材の細かな種類と空間にもたらすイメージを解説していきます。
【フローリング】無垢と複合
無垢フローリングとは、原木から必要な長さで木材を切り出し、そのまま製材したフローリング材のこと。気温や湿度によって木が収縮し隙間や反りが発生することもありますが、天然素材だからこその風合いと肌触りを感じることができます。
対して複合フローリングとは、ベニヤ板を貼り合わせた合板の表面に薄くスライスした無垢材を貼り付けたフローリングのこと。無垢フローリングと比較して季節ごとの床材の暴れが少なく、コストカットも期待できるのが最大の利点。一方で、鋭利なものなどを落として表面の無垢材の層を傷つけてしまうと修復が効かない点には注意が必要です。
○無垢フローリングを取り入れた事例
・リノベーション事例:「antique×ダウンフロア」(神奈川県横浜市)
ダイニングキッチンに無垢チークのフローリングを採用したK邸。アンティーク家具がお好きなKさんは、経年で床の表情が変化していくのを楽しみにしているんだとか。
あえて段差を設けたK邸では、無垢チークのフローリングが張り合わされた断面をリビングから眺めることができます。リノベーションならではの面白いアイデアですね。
○複合フローリングを取り入れた事例
・リノベーション事例:「スカンジナビア×artistic」(東京都渋谷区)
大好きなアアルト邸を参考に、カバ材の複合フローリングを板の先端を25mm幅ずつずらしてリズミカルに張り込んだT邸。猫を飼うことを前提としていたため、お掃除のしやすさも床材を選定する上での優先事項だったんだとか。
<フローリング床がもたらす空間イメージとメリット>
・有機的な自然素材ならではの温かみを感じられる
・樹種によって木目や節の有無が異なり、高級感〜ラフまで様々な印象を演出することが可能
・表面を塗料やオイルで塗装することで、印象を変化させたり耐久性を高めることも可能
【タイル】磁器質タイルとPタイル
石英・長石と粘土を合わせて焼き上げた磁器質タイル。吸水性がほとんどないこととその硬さが特徴で、軽く叩くとコツコツと音がします。メンテナンスが容易な点はメリットとなりますが固いものを落としたり、地震等の揺れによって割れてしまうケースもあるため、扱いには注意が必要です。
一方、Pタイルはプラスチック樹脂を原料とする薄い板を規格サイズに成型加工した床材のことで、磁器質タイル特有の割れのリスクを回避しつつ、タイルのシームレスな仕上がりを実現することができます。色や柄が豊富で、土足で歩く場所にも使われるほど頑丈でお掃除しやすい素材のため、キッチンや洗面室など水回りで人気の高い素材です。
○磁器質タイルを取り入れた事例
・リノベーション事例:「365DAYS」(東京都江東区)
愛犬「すもも」と暮らすSさんご夫婦。以前お住まいだったご自宅では、愛犬がフローリングの上を滑って上手く歩けず苦労していたんだそう。
そんな背景から選んだ磁器質タイルはペットの足腰への負担を考慮して開発されたタイル材で、グリップが効いて滑らないだけでなく、夏はひんやり、冬は床暖房でポカポカです。
○Pタイルを取り入れた事例
・リノベーション事例:「daylight」(神奈川県川崎市)
玄関土間以外の全ての床をPタイルで仕上げているO邸。当初はモルタル仕上げを希望していましたが、コストと生活利便性を考慮して、モルタル調のPタイルにシフトチェンジ。汚れたらさっと拭けて快適なんだとか。
モールテックス仕上げで設えた造作カウンターとの相性も抜群。O夫妻が家づくりのテーマとして掲げていた「無機質で落ち着いた空間」を創り上げました。
<タイル床がもたらす空間イメージとメリット>
・インテリアが引き立つ、アートギャラリーのような静謐なデザインが可能
・メンテナンスが比較的楽
・色・柄が豊富で、イメージにあった床材を見つけられる
【左官仕上げ】モルタルとモールテックス
セメントを塗り固めて仕上げる左官材、モルタル。これまで一般的に使われることが多かった玄関土間以外に、リビング全体や、キッチンの腰壁をモルタル仕上げにしたいという方も多い、リノベーションならではの人気素材です。
モルタルの弱点はヒビ割れを起こしやすいということ。さらにモルタル自体には遮音性がなく重量のある素材ため、マンションの居住スペースの床材としてはなかなか採用することが難しい素材でした。
そこでオススメなのが、近年主流となってきたモールテックスという左官材。モルタルの成分に加えて特殊な樹脂が配合されており、柔軟性や強度、防水性に優れています。しかし、その分費用はモルタルの2倍。実現したいイメージとコスト感のバランスを見て取り入れたい素材です。
○モルタルを取り入れた事例
・リノベーション事例:「MORTAR POT」(東京都江東区)
思いきってワンルームの床全面に敷いたモルタル。無機質で荒っぽい質感だからこそ、グリーンの生き生きとした表情が美しくみえます。時間とともに生まれた小さなヒビにも愛着が湧きそう。
○モールテックスを取り入れた事例
・リノベーション事例:「a line」(東京都町田市)
廊下〜LDKの床を全面モールテックスで仕上げたTさん。無駄な要素を削ぎ落とした空間に、均一なグリッドで構成された木の壁が美しく映えます。
造作のダイニングテーブルや壁、梁もモールテックスで仕上げていますが、グレーに濃淡をつけることでシンプルながらも単調さを感じさせないデザインに纏めました。
<左官床がもたらす空間イメージとメリット>
・継ぎ目のない、シームレスで無機質な印象
・色の濃淡やコテ跡の表現で唯一無二の空間づくりが可能
・家具の合わせ方によって、上質にもラフにも空間を演出することができる
【カーペット】
「ホコリがたまりそう」「掃除が大変そう」など、ちょっとネガティブなイメージもあるカーペット。しかし実際に歩いてみると、しっかりと踏みしめることができるその感触に懐かしいような安心感を覚えます。
主に使われるのは寝室やキッズスペースなどのプライベート空間から、パブリックなLDKまで。床座でくつろげるカーペットの空間は、一緒に過ごす家族やお客さんとの距離感もぐっと近くしてくれます。
○カーペットを取り入れた事例
・リノベーション事例:「北欧×ASH」(東京都)
ピンク寄りの淡いベージュのカーペットが柔らかな空気感を醸し出すLDK。北欧テイストのインテリアとの相性も抜群です。
メンテナンス性を考慮し、毛足が長すぎず、目の細かいカーペットを選定しました。
<カーペット床がもたらす空間イメージとメリット>
・衝撃を吸収してくれるため、キッズルームや寝室におすすめ
・ファブリック特有の温かみのあるインテリアづくりが可能
・汚れた際の張り替えなどは、比較的容易でメンテナンスがしやすい
個性いろいろ!床材で見る5つのリノベーションアイデア
ここからは、様々な床材で仕上げられた空間をご紹介。メジャーな床材以外の、個性的な床材も!これから家づくりをされる方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
CASE.1 グレーだけじゃない、白のモールテックスで仕上げたLDK
・リノベーション事例:「ニュアンス×masion」(東京都)
ほんのりベージュがかった白で仕上げられた床、壁、天井。グレーではなく白のモールテックスを使うことで、光がやわらかく拡散される開放的な空間に仕上がりました。
窓辺には、床と同じく白のモールテックスで仕上げたアーチ状の階段型のオブジェを造作。インテリアとしても、アイテム撮影のスタジオとしても活用できる空間に仕上げました。
CASE.2 ヨーロッパの工場地帯を思わせるヴィンテージワンルーム
・リノベーション事例:「UNITY」(神奈川県横浜市)
床に無垢チークのヘリンボーンを贅沢に敷き詰めたワンルーム。お気に入りのアンティーク家具とも相性がよく、リノベ当初から取り入れたいと思っていた素材なんだとか。
ブリックタイルを貼り込んだ独立壁ともマッチしていて、まるで本物のヨーロッパの工場地帯のような印象を空間全体から醸し出しています。
CASE.3 パーケットフローリングと玄関タイルで床材がリンク
・リノベーション事例:「Colorful」(東京都狛江市)
個性的な柄のパーケットフローリングを採用しているN邸の床。ストレート張りのパーケットフローリングとはまた違った温かさ、懐かしさを感じますね。
玄関には、奥様がカタログを見てビビッときた!という鮮やかなブルーのタイルを採用していますが、実は貼り方をフローリングと合わせているんだとか。細部へのこだわりが、洗練されたリノベ空間を実現しています。
CASE.4 サイザルと磁器質タイルの床材を斜めにゾーニング
・リノベーション事例:「relaxing」(東京都港区)
リビングの床は大判の磁器質タイル、洗面やクローゼット前の床はサイザル麻と呼ばれる天然素材で仕上げたS邸。
床の見切りは斜めにカットし、メリハリを表現しました。
CASE.5 ギャラリーのようなタイル床と、木の渡り廊下がある家
・リノベーション事例:「THE GALLERY」(東京都世田谷区)
Mさんのお宅も、LDKの床は磁器質タイル仕上げ。艶感のある真っ白なタイルと濃グレーの目地は、アートギャラリーや海外の家を彷彿とさせます。
一方で、LDKと寝室を結ぶ廊下にはオークフローリングを採用。モルタルの玄関土間に浮かぶ離小島のようにあえて隙間を開けて設えることで、非日常感を演出しています。
最後に
見た目の印象だけでなく、その踏み心地や質感によっても住む人の気分を大きく変える床材。常に体が触れる唯一の場所だからこそ、部屋の用途や演出したい雰囲気に合わせて床材を選びましょう。
よくあるご質問
Q1. リノベーションで使うことが多い床材はなんですか?
A.
リノベーションでは王道のフローリングやカーペットだけでなく、タイルやモルタル、サイザル麻など様々な素材を床材として使用します。特に水回りにはタイルやモールテックス、玄関土間にはモルタルなど、家の中のどのエリアに使用するかによって適した素材が異なります。
Q2.フローリングの種類と特徴とは?
A.
フローリングは大きく分けて「無垢フローリング」と「複合フローリング」に分けられます。経年とともに表面の色が深まっていくのは天然の木ならではのメリットですが、収縮が大きく反りや隙間ができてしまう可能性も。一方複合フローリングは集成材にスライスした無垢板を貼り合わせているため季節による収縮は比較的ありませんが、表面を傷つけてしまうと修復が難しい点には注意が必要です。
Q3. タイルの種類とそれぞれの特徴とは?
A.
タイルは大きく分けて「磁器質タイル」と「Pタイル」に分けられます。石英・長石と粘土を合わせて焼き上げた磁器質タイルはその硬さが特徴で、メンテナンスが容易な点はメリットとなりますが割れてしまうリスクもあるため、扱いには注意が必要です。
プラスチック樹脂を原料とするPタイルは、磁器質タイル特有の割れのリスクを回避しつつ、タイルのシームレスな仕上がりを実現することができます。色や柄が豊富で、土足で歩く場所にも使われるほど頑丈でお掃除しやすい素材のため、キッチンや洗面室など水回りで人気の高い素材です。
Q4. モルタルとモールテックスの違いとは?
A.
セメントを塗り固めて仕上げるモルタルは、ヒビ割れを起こしやすい点や、モルタル自体には遮音性がない点が床材として採用する際のデメリットでした。一方でモルタルの成分に特殊な樹脂を配合したモールテックス材は、柔軟性や強度、防水性に優れ、モルタルの弱点をカバーできる素材として注目されています。しかし、その分費用はモルタルの2倍。実現したいイメージとコスト感のバランスを見て取り入れたい素材です。
Q5. カーペットのメリット・デメリットとは?
A.
ファブリック特有の温かみのあるインテリアをつくれる点や、フローリング等の床材と比較して張り替えなどのメンテナンスが容易である点は大きなメリット。一方、食べこぼしや飲み物をこぼしてしまった際は汚れが取りづらいケースもあるため、選定の際には毛足の長さや目の細かさなど、用途に応じて慎重に素材を選定しましょう。