棚板の裏側に、スリット状の窪みを掘り込む職人。
L字アングル(金具)をはめ込むための溝です。
本来なら、平らな板にそのまま金具を取り付けても問題ありません。
それでも、一手間をかけて凹凸をなくす。
“空間の気配”は、こうした積み重ねでつくられていきます。

■暮らしのノイズを取り除く
空間においてノイズと感じるものには、
物理的なものから感覚的なものまで、さまざまなものがあります。
高さや太さのわずかな不揃い。
指先に触れる段差。
動作と反応の、小さなズレ。
こうした違和感は、意識しなくても身体が感じ取ります。
リノベーション工事においては、そんなノイズをなるべく無くすように、
ほんの少しの微調整や、見えない一手間を大切にしています。
例えば、先ほどの棚板。
裏にアングルの凹凸が現れないように加工を施し、
設置する壁側も、下地を調整することでアングルの厚みを壁の中に飲み込ませています。


接続部が見えないだけで、
不要な情報が静かに削ぎ落とされ、見せたいものが見えてくる。
そこに置くものが、より引き立つ空間になります。
■不均一さをつくる一手間
一手間とは、何かを削ぎ落とすことだけではありません。
例えば、石を散りばめ、研ぎ出して仕上げるビールストーン。
色や粒の大きさがお客様のイメージ通りになるように、
現場では自然なばらつきをつくり出す試行錯誤や、粒の選定を行います。

一つひとつに丁寧な一手間をかけ、
お客様が選び取った素材を、一番良い状態の納まりに導く。
そうした仕上がりの裏側には、
さらに目に見えない工程が積み重なっています。
■“見えない一手間”の正体
厚み、硬さ、性質も異なる様々な素材。
その一つひとつの性質を理解し、仕上がりを逆算しながら組み上げていく。
ものづくりとは、そんな判断の連続です。
見えない一手間。
そこにあるのは、空間の完成度への敬意です。

目に見える仕上がりだけでなく、
その裏側にある一手間まで整えること。
そうした一つひとつが、
空間の気配を整えていきます。