この連載の副題には“ブランドの中の私”とつけていますが、ブランドディレクターとして日々の仕事に向き合うなかで、自分の中にも少しずつ変化が生まれてきました。
ブランドをつくっているようで、実は自分自身がブランドに育てられてきた、そんな感覚があります。
お客様へのご入居後の取材で特に印象的なのは、みなさんが一つひとつの家具や暮らしの道具について、『どんな気持ちで選んだのか』『なにがいいと思ったのか』を自分の言葉で丁寧に語ってくださること。

その姿に触れるたびに、“好きなものに囲まれた暮らし”は単なるインテリアの話ではなく、
その人の生き方そのものなんだ、とひしひしと感じています。
私自身も、一人暮らしを始めてからは特にブランドキャッチコピーにもある“いい時間”という言葉が、自分の中でよりリアルに腑に落ちるようになりました。
たとえば旅をしていても、つい“暮らし”にまつわる場所に足が向きます。
現地の器屋さんやファーマーズマーケットで作り手の話を聞きながら、背景や想いを知ったうえで、自分の暮らしに“しっくりくる”ものを迎え入れる。

そうして出合ったものには自然と愛着が生まれ、暮らしの中に豊かさが積もっていくように感じます。
お気に入りの器で食事をしたり、季節の花を飾ったりするような小さな選択が、気持ちを整えてくれる。
そんな何気ない時間を重ねていくうちに、自分らしい生き方が形づくられていくのではないでしょうか。
自分にとって心が豊かになるものごとを考えることの意味や大切さは、お客様の暮らしやブランドと向き合うなかで教えていただいたものです。
どんな空間で、どんなふうに時間を過ごすか。
それは、その人の暮らし方や生き方を形作っていくもの。
nuというブランドとともに歩んできた時間が、自分の中の“ものさし”を静かに育ててくれたと感じています。
次回の最終回では、その“重なり”を通して見えてきた「これからのブランド」について、改めて言葉にしてみたいと思います。
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