海外のアパルトマンを彷彿とさせる白ベースのシンプルな空間を、選りすぐりのインテリアが彩るM邸。どこを見渡しても居心地の良いM邸の秘訣は、デザインに昇華された暮らしやすさの追求にありました。
夢を叶えるフィーリング
「白いタイル貼りの海外邸宅のような空間で暮らしたかったので、リノベーションは必然でした」。
そう話すM夫妻の家づくりはこの取材から約1年半前、2021年の初夏にスタートしました。当時は両国エリアの賃貸に住んでいたというM夫妻。街の雰囲気や利便性は気に入っていたものの内装や設備に古さが目立つようになり、マイホームの購入に向けて本格的に動き出したといいます。
「会社選びの際は一応何社さんかお話は聞きましたが、心の中ではほとんどnuリノベーション(以下、nu)さんにお願いしようと決めていたんです」と嬉しい言葉をかけてくださった奥様。以前から『普通の家では満足できない、理想の家づくりを叶えるにはリノベーションしかない!』と考えていた奥様は、nuの施工事例やそこに写っている家具にも好みのものが多かったことからフィーリングの良さを感じ、早速個別セミナーに参加。直接アドバイザーと会話をする中でその直感に間違いはなかったと確信し、個別セミナーを皮切りにアドバイザーとの物件探しを開始しました。
最終的にM夫妻が購入したのは、世田谷区の約58㎡の物件。「希望条件を伝えて数ヶ月、物件情報を送っていただいたり内見に行ったりしていたんですが、これだ!という物件が見つからなくて。エリアを広げようか?と夫婦で相談していたタイミングで、ちょうどこの物件が出てきたんです。内見のときはリノベ後の空間がなかなかイメージできなくて不安もありましたが“ここを逃したら次はないんじゃないか”と直感して。お昼に内見して、夕方には『ここに決めました!』ってアドバイザーさんに連絡しました(笑)」とご主人。
線路に近いこともあってか相場よりも少し価格が安かったというこの物件ですが、線路側に面する窓にはしっかりと二重窓が設置されており、そんな立地条件を感じさせないくらい室内は静か。築39年とは思えないくらい共用部のメンテナンスも行き届いていて、物件自体のポテンシャルの高さを感じます。
譲れないポイントを事前にお二人でしっかりと話し合っていたこと、ご自身の直感に従ってスピーディに決断をしたことで理想の物件に巡り合ったM夫妻。ついに、奥様が思い描く空間を創り上げるデザインミーティングのスタートです。
精緻に整えたデザイン
洗練されたシンプルなデザインを前提に、ただかっこいいだけではなく、そこに実用性が兼ね備えられていることがM夫妻が理想とする家づくりの条件でした。そんなM夫妻にデザイナーが提案したコンセプトは『THE GALLERY』。美術品にフォーカスすることを前提につくられるギャラリーのような空間と、そこに静かに佇むインテリア。そんな美しい世界観の裏側には、心地良い時間を演出する実用性を兼ねた工夫が精緻に織り込まれている…、そんな空間をイメージしました。
「このコンセプトを聞いた時、これはもう下手なものは置けないなと思いました(笑)。“GALLERY”の名に恥じない空間に暮らさないと!と、ますます完成が楽しみになりました」とご主人。デザイナーとの打合せは、時に4〜5時間に及ぶこともあったといい、「私たちのイメージを伝えてその場でパースを動かしてもらったりしていると、あっという間に時間が過ぎてしまって。デザイナーさんも私たちの要望に対して、全体のバランスや使い勝手を検討しながら良し悪しを判断してくれたので、信頼して意見を求めることができました」。「『こうしたらどうかな?』とプランを組み替えながら色々なパターンを検討して、一周回ってデザイナーさんの提案プランに戻ってきたりしてたよね(笑)」と当時を振り返るお二人。理想の空間を追求する打合せは一回一回が濃密で、お二人にとってはかけがえのない楽しい時間だったということが伝わってきます。
中でもこだわったポイントは?という質問に、「1つを選ぶのは難しいけど…」と悩みながら奥様があげてくださったのはキッチン。壁一面にぴったり納まるようサイズオーダーした幅約3.3mのキッチンは、天板に一枚板の人工大理石が採用されていて、シームレスなデザインもさることながら継ぎ目がないことでお手入れのしやすさも抜群。エレベーターからの搬入が難しく、当初は2枚の天板をつなぎ合わせる案もあったといいますが、寝室側の窓からであればクレーンで搬入できること、住居内の動線も確保できることなどの条件が奇跡的に重なり、この一枚板のワークトップが実現したんだとか。そういった細部に込められたこだわりが、M邸の繊細なデザインを静かに引き立てます。
そして、LDKと同じくらい時間をかけて打合せを重ねたという土間・廊下スペースにも、M夫妻のデザインと暮らしやすさへのこだわりが余すことなく散りばめられています。
まず、なんといっても目を引くのは廊下に設えた造作洗面台。使用頻度が高く、LDKにいても常に視界に入る場所であることから、デザインと暮らしやすさのバランスには特に悩んだといいます。「当初はデザイン性を優先してラウンド型のミラーを付けたいと思っていましたが、収納力などの観点からミラーボックスに変更しました。台の上がスッキリと片付くので、これはやってよかったね」と、ここにも暮らしやすさへのこだわりを忘れないM夫妻。そんな洗面スペースとガラスブロックをはめ込んだ壁を隔てて並ぶのは、靴好きのご主人がこだわり抜いたというSIC。新婚旅行で訪れたスペインで目にした革靴専門店のイメージを落とし込んでデザインを構成していったといいます。棚板の下に忍ばせた間接照明に照らされているお気に入りの一足を丁寧に手入れする時間は、ご主人がリノベーション前から思い描いていた理想の過ごし方だったんだとか。
また、M邸を語る上で外せないのが土間に設えた渡り廊下。「飛び石のようにする案もありましたが、寝室との動線になるので躓いたら危ないなと思って。でも、普通の廊下にするのはつまらないと考えていたところで、この渡り廊下の案が出てきたんです」。離れ小島のように居室の床から13cmずつ離して設えた渡り廊下は、隙間から覗くモルタルの床が抜けを演出し、まるで旅館を訪れているかのような非日常を感じさせます。目線を横に移すと、ワードローブを飾るように仕舞うことができる広々とした土間スペースと、静かに揺れる白のレースカーテン。こちらも、アパレルショップをイメージしてつくり上げた、M夫妻お気に入りの空間です。
憧れに暮らす
M邸のリビングや土間に佇む北欧デザインの椅子の数々は、リノベーション後に購入したお気に入りの家具なんだとか。「賃貸に住んでいた頃からインテリアを見るのは好きでしたが、憧れ止まりだったので。リノベーションを機にそういった家具を迎えられたこと、家具のために整えられた空間で、好きなものだけに囲まれている今の暮らしは幸せです」とご主人。奥様も「リノベーション前から、ソファに腰掛けて自分好みに設えたキッチンや家具を眺める暮らしを夢見ていたんです。実際にそれが実現されて、さらにガラスドア越しにはこだわりの造作洗面台も見えて。まさに夢が叶った!という感じです」と続けます。
来年の春には新たな家族も加わる予定だというM夫妻。「その頃にはまた家の中の雰囲気も変わっていそうだね」「物も増えちゃうね(笑)」と顔を見合わせて笑うお二人の表情は希望感に満ち溢れていて、こちらまで温かな気持ちにさせられます。
大切につくり上げたお二人の“GALLERY”で、M夫妻の新たな暮らしはこの先も続いていきます。