ホワイトアッシュとグレーを基調にしたピースフルな空間に、真鍮のアクセントが映える2LDKプラン。料理好きのご夫婦のこだわりが詰まった、カフェのようなキッチンが主役のS邸を取材しました。
街も家も、らしく暮らす
東京都墨田区。東京スカイツリーからほど近い落ち着いた雰囲気のマンションに暮らすS夫妻は、1年前にこの築30年のマンションをリノベーションしました。実は、以前も同じ最寄り駅の賃貸に住んでいたS夫妻。ご主人は神奈川、奥様は千葉が職場だというS夫妻にとって、お互いの中間地点であるこの街はとても便利で、家の購入を考えた際も自然とこのエリアで探していたと言います。「年齢的にそろそろ家を買いたいと考えていたのですが、新築マンションの画一的な内装が好みではなかったので、戸建の注文住宅か中古マンションをリノベするという2択でした。ただ、このエリアで戸建というのはあまり現実的ではなかったので、せっかくだったら自分好みの空間に変えられるリノベーションをしようと思って」とご主人。ネットで知ったいくつかのリノベ会社を比較したのち、事例の雰囲気が一番好みだったnuリノベーション(以下、nu)の個別セミナーに参加。「まず、アドバイザーの方のセミナーがすごく良くて!それにパンフレットやHPを含めブランディングや見せ方が統一されているのも魅力的だったので、nuさんに依頼することにしました」とご主人。「アドバイザーの方に『他の気になっている会社の話も聞いてみたらどうですか?』って言われたけど、結局nuさん以外いかなかったもんね(笑)」と、懐かしそうにご主人と笑い合う奥様。S夫妻が物件探しでエリア以外に重視したことは、家族が余裕を持って暮らせる60平米以上の広さがあること。ファミリータイプの物件が少ないエリアだったこともあり「長期戦を覚悟していました」というご主人でしたが、実際は個別セミナーに参加してから約2週間で理想の物件に出合ったのだそう。「ここは66㎡で広さもクリアしてるし、他に内見した物件と比べて共用部の状態がすごく綺麗だったのが決め手です。不動産はよく巡り合わせと聞きますが、本当にその通りでしたね」とにっこり。街も家も、妥協せずに自分らしく暮らすという選択肢がベターライフを築いていきます。
異素材の調べ
デザイン打合せが始まる前に、担当デザイナーから勧められたPinterestでイメージ収集をしていたというS夫妻。そこで様々なデザインに触れたことで、自分たちの好きなテイストや叶えたいことが明確になっていったといいます。「私たちはシンプルで装飾が少ない空間が好みだったので、白を基調にしたいとデザイナーさんに伝えました。ただ、白オンリーというよりは、白とグレーのコントラストにアクセントで真鍮を足して、シックな空間にしたいと思っていて」とご主人。そんなS夫妻にデザイナーが提案したのは、“有機と無機”というコンセプトです。木材などの有機質とタイルなどの無機質をバランスよく組み合わせた上質な空間を創り上げることを念頭に置いてデザインされたS邸には、白とグレーのコントラストが落ち着いた雰囲気を放つ約15JのLDKが広がっています。シンプルでスッキリとした空間ながらも、キッチンや扉の取っ手に散りばめられた真鍮が、洗練された空気感を演出。床材はできるだけ白に近いホワイトアッシュのフローリングを採用し、「さらにその上から白く塗装してもらいました」とご主人。キッチンバックカウンターにもフローリングと同じ色味の木を使用しているため、空間に纏まりを感じます。また、夫婦揃って料理好きだというお二人。今回のリノベーションではキッチンにたくさんのこだわりと時間を費やしたそう。「賃貸のキッチンは狭くて調理器具もまともに置けなかったので、夫と一緒に作業ができる広々としたキッチンに憧れていて。リビングに対してオープンな仕様にしたいというのも最初から決めていました」と奥様。キッチンの配置は初回のプレゼンテーションでデザイナーから複数提案があったそうで、「全部魅力的でしたが、パントリーも作れるという点に惹かれこのプランでお願いしました。パントリーはデザイナーさんからの提案だったのですが、実際に暮らしてみて造っておいて良かったなって実感してます。リビングから冷蔵庫が見えないだけで、生活感がだいぶ軽減されているので。そういう自分たちが気づかない提案を色々としてもらえたのは嬉しかったです」と笑顔で話します。
細部までこだわったという全長3m超えのキッチンバックカウンターは、全てがオーダーメイド。食事の準備中にお皿が取り出しやすいよう一部はオープンな仕様で、扉ありの部分には真鍮の取っ手が取り付けられています。また、キッチンの面材も素材を合わせてゼロから造作し、統一感のある空間に設えました。グレーの壁が印象的なバックカウンター上部の飾り棚は、ご主人がPinterestで見つけた画像を参考に細かく決めていったそう。「キッチンが主役のようなリビングなので、棚板の長さや余白をどれくらい残すか、高さはどうするかなどリビングからの見え方を色々と検討しました。特に木や真鍮など素材のバランスが気に入っています」。選りすぐりのアイテムが並べられた飾り棚はまるでカフェのような雰囲気で、そこにいるだけで楽しい気持ちにさせてくれます。そういった意匠へのこだわりはLDK以外にも反映されていて、「廊下はnuさんの事例で見てかわいいなと思っていたヘリンボーン張りにしました。リビングはシンプル主義なので、廊下だけっていうのが我が家にはちょうどいいかなと思って」と奥様。また、玄関に隣接した個室の扉をガラスの格子戸にしたことで、玄関にも明るい光が届くようになったといいます。「内見の時に玄関が狭くて暗くてびっくりした記憶があって。だからリノベで改善したいなと思っていた部分だったんです。廊下の框を斜めにしたことで玄関を広く感じられるので、これもやって正解でした」と続けます。実はこの斜めの上り框は、ご主人のスケッチが元になっているそう。学生時代にデザインの勉強をしていたこともあって、設計中に何度かラフスケッチを描いてデザイナーにイメージを共有していたといいます。「設計期間中の主人はとにかく楽しそうで(笑)朝起きた瞬間から『あそこのあれ、どう思う?』ってずっと家のことを考えていて、想像の10倍くらいはリノベを楽しんでいた気がします」と奥様が当時のエピソードを教えてくださいました。
家に合うカップ
リノベーション後は夫婦で料理をする時間が圧倒的に増えたそうで、「キッチンが広くなったので煮込み料理に挑戦してみたり、在宅ワークの時は簡単なお昼ご飯を一緒に作ったりしています。あと、リノベしてお皿がたくさん買えるようになったのが嬉しくて。前は買いたくても収納場所がなかったので、いま家にあるお皿の半分以上はリノベ後に買ったものなんです。特定のブランドというよりは、かわいいと思ったものを一期一会で買うことが多いかも」と奥様。バックカウンターには本格的なコーヒーを楽しむためのサイフォンが飾られていて、「お二人ともコーヒーがお好きなんですか?」と尋ねると、「僕はこの家に引越してきてから飲むようになりました。隅々までこだわった空間なので、なるべくこの家にふさわしい生活をしたいと思うようになりその一環でコーヒーを(笑)この家に合うコーヒーカップを選んだりするのも楽しくて、家にいる時間が好きになりました」と笑顔で語るご主人。好きなものに囲まれて過ごすことが何気ない日常を豊かにしてくれること、そしてそれがリノベーションの醍醐味だということをひしひしと感じます。
“有機質と無機質”、2つの要素がバランスよく組み合わさったシックなS邸。やわらかなコントラストが醸す穏やかな空気に包まれながら、かけがえのない日常を紡いでいきます。