キャットウォークと造作の内窓がアイコニックな、機能美が光る空間。妄想が現実になった住まいには、夫婦と保護ネコ2匹の穏やかな暮らしがありました。
愛猫と家探し
「私がネコを飼いたかったんです。それと、賃貸時代のリモートワークの日はリビングのテーブルで夫婦向かい合って仕事をしていたのですが、ご飯のたびにパソコンを移動させるのが嫌で。それで、そろそろマイホームが欲しいとなって」。そう話すのは、Aさんご夫婦の奥様。東京湾岸の再開発地区に立つマンションの一室に、2匹の保護ネコ・すなくん、もんくんと一緒に暮らしています。奥様はもともと新築には興味がなく、4年以上前から自分の意見を反映させた中古マンションのリノベーションがしたいと考えていましたが、当時ご主人が大学院に通っており、時間と資金をそちらに譲っていたと言います。
「そんな感じで、賃貸に住みながら夫の卒業を待っていて。卒業と同時に一気にリノベ会社を探し始めました(笑)」と、奥様。実は4年前に一度某リノベ会社に相談したことがあり、それを機に多種多様な会社があることを知ったそう。インスタグラムで各社の施工事例をチェックし、今回はデザインにピンと来たnuリノベーション(以下nu)を含む計2社に相談したと言います。しかし、もう1社は拠点が中部エリアにあり、関東での物件探しに弱かったこと、nuの事例の方が自分たち好みであることに気付き、物件探しからワンストップでnuに依頼することにしたそうです。
「デザインがとにかくオシャレだし、住んでいる皆さんもオシャレで、私たちもこういう暮らしをしたいと思いました。恵比寿にあるnuのオフィスに行ったときも、カッコよくて感動して。私もこんな会社で仕事したいと思いましたよ(笑)」と、奥様は振り返ります。
実は、ネコが2匹飼育できる条件のマンションはそう多くなく、物件探しの難易度は高めだったそう。公開されている物件情報には飼育細則まで記載されていることが少なく、わざわざ不動産屋に電話して確認しないといけない場面も多かったと言います。
「nuのアドバイザーさんが一生懸命探して電話してくれて、本当に助かりました。結局6軒くらい内見できたのですが、アドバイザーさんは内見中も物件の善し悪しを正直に言ってくれて。『共用廊下にこんなにモノが置いてあるところはやめた方がいいです!』とか(笑)。親身になって一緒に見てくれましたね。このマンションは駅近で便利だし、歴代の住人が2度ほどリノベしていたので、ある程度綺麗だったことも決め手になりました。実は予算オーバーだったけど、既存設備を活用できていいかなって」と、ご夫婦。
こうして、築36年、75㎡の物件を購入し、温め続けた思いと共にリノベーションが始まりました。
彩りを添えて
「友人たちに『…やったな?(ニヤリ)』と言われるくらい、“リノベした感”を出したかったんですよ(笑)」と、ご主人。その上でさらに譲れない条件は、ネコと快適に共存できることでした。
「本当はネコたちが家全体を行き来できるようにしてあげた方がいいのですが、ベッドやクローゼットにネコの毛が付くのは避けたかったので、その分リビングダイニングを広くして、その中で思う存分自由にさせてあげることにしました」と、奥様。
そこで設計デザイナーは、1LDK+WICのプランを提案。ネコちゃんが入れないように半個室にした3.1畳のキッチンを間取りの中心に据え、南側に夫婦それぞれのワークスペースを含む17.3畳の広々LDを、北側に廊下を兼用する3.5畳のWICと洗面台を配置。さらに北側の玄関側に、4.3畳のベッドルームと広々土間を設けました。ネコちゃんたちが汚してもさっと掃除できるように、LDの床材は塩ビタイルに。天井は、以前の住人が施したリノベで躯体現しになっていたものをそのまま活用しました。通常のマンションよりも高い2800mmの天高を活かして、海外事例を参考にしたキャットステップと、キャットウォークを兼ねた壁面収納も造作しました。
nuのインテリアスタイリングサービス<decoる>で購入したeilersen(アイラーセン)の<PLAYGROUND SOFA(プレイグランド ソファ)>のエメラルドグリーン色に合わせて、壁のアクセントクロスはライトグリーン色を採用。この壁紙は傷に強いルノンの<ネコクロス>なので、ネコが引っかいても安心です。その他、玄関には譲渡してもらった保護ネコ施設の規定に合わせて脱出防止用のカギを建具に設置し、Aさんもネコちゃんたちも安心して暮らせる空間に仕上げました。
半個室のキッチンには、リビング側の壁にオリジナルの内窓を造作。デザイン性も兼ねていて、キャットウォーク同様に空間のアイコンになっています。
「窓が無いと隔離されて寂しいし、リビングのエアコンの風を取り込みたかったんです。ここから食器の受け渡しもできるし、テレビも見られて便利ですね」と、奥様。キッチンは以前の住人が新調していた既存のものを移動して利用し、さらにユニットバスも既存を移用して、コストコントロールに繋げました。
廊下兼用のWICは天高の縦空間を存分に活用し、上下2段に設置したポールに“掛ける収納”ができる造りに。通行時の圧迫感を軽減するために、建具ではなくシアー素材のカーテンで目隠ししました。4色のピンク色のカーテンをグラデーションで取り付けることで、流れるような印象を生み出しました。
WICに隣接する廊下内の洗面台は、お風呂に隣接した脱衣所の洗面台とは別に設けた来客用。奥様は毎朝ここでメイクもするそうで、この空間で着替えからメイクまでが完結して便利だと言います。洗面台引き出しの手掛け奥の小口はピンク色で塗装。カーテンのピンク色とさりげなくリンクさせて、洗練された印象を引き立てました。一方の脱衣所は、夫婦の歯磨き用洗面台と洗濯干しポールを設置し、プライベートな水回りに。
その他、寝室には落ち着いた印象のウォールナットフローリングとネイビーのアクセントクロス、トイレにはグリーンのアクセントクロスを採用し、それぞれの居室にも個性を持たせました。
こうして、ネコちゃんもご夫婦も大満足な、彩り豊かな空間が完成しました。
妄想とシミュレーション
この家に住んで4ヶ月。もともと保護施設で仲良しだったというすなくんともんくんも、寄り添いながら快適に過ごしています。リモートワークは夫婦ともにピーク時に比べると減ったものの、それぞれ自分のワークスペースで仕事に集中できて快適になったそう。以前は生活空間に部屋干ししていた洗濯物も、脱衣所に干せるようになったことで、美しく暮らせるようになったと言います。
「やっと暮らしの全てが整った!って感覚ですね。賃貸時代はダイニングテーブルの上に色んなものがのっていたけれど、今は常に片付いているから気持ちいいし、家全体を散らかさないようになりました。ネコも居るし、この家が好きなので、出かけなくても平気です (笑)」と、奥様。以前はピラティスのレッスンをスタジオで受けていましたが、この家に入居してからはネコちゃんたちのご飯の都合もあるので、リビングにマットを敷いてオンラインで受けているそうです。
ご主人も、「賃貸時代はキャンプ用品を仕舞う場所がなくて車に積みっぱなしにしていましたが、今は土間に一括収納できるので助かっています。ネコの砂やペットシーツも仕舞えて、あの土間は本当に便利です」と満足気です。
お気に入りのインテリアは、<decoる>で購入したアクタスの4人掛けテーブル、flameの壁付けブラケット照明<hanger(ハンガー)>、リビングの天井に吊るしているlistudeのスピーカー<sight(サイト)>。今後はミラーボールを購入して、天井から吊るしたいのだとか。
「このリノベには大満足しています。毎週設計打合せに行くのが楽しくて仕方なかったですね。リノベを一言で言うと、妄想とシミュレーション。毎週nuのスタッフがCGをアップデートして見せてくれたけど、例えば壁紙の色なんかは、窓から光が入ったらどうかは現地で試してみないと分からないじゃないですか。だからこそ、想像力を働かせつつ、実際に現地に持って行って検証してみたり、家具や収納するもののサイズをちゃんと測ったりしました。設計デザイナーさんは大量のサンプルを取り寄せて自宅に送ってくれたり、そのデザイナーさんならではの感性で細かい提案をしてくれたりして助かりました」と、奥様。温かく見守るご主人も、笑顔で頷いています。
Aさん家族のリノベ後の暮らしは、まだ始まったばかり。妄想がどんどん現実になっていく毎日を、これからも愉しんでいくことでしょう。
Interview & text 安藤小百合