
家の中心に佇むテラコッタ色のアイランドキッチン。やわらかな自然光が降り注ぐK邸には、何気ない日常を慈しむ家族の穏やかな時間が流れていました。
テラコッタに恋をして
都心の喧騒を忘れるような静かな住宅街に佇む、とある低層マンション。Kさん一家がこのマンションを購入したのは約1年半前のことでした。
以前からインテリアや空間デザインにこだわりがあり、戸建を建てることを検討していたというお二人ですが、お互いの職場へのアクセスを考慮したエリアではなかなか条件に合う土地が見つからず、マンションリノベーションにシフトチェンジ。ご自身でも中古物件を調べつつ、以前からInstagramで目にしていたnuリノベーション(以下、nu)へ相談に訪れたと言います。
「この物件はnuさんの初回相談に来る前に見つけていて、早速見に行きましょう!と話していたんですが、直前に一番手の方が申し込まれてしまったようで…。意気消沈していたのですが、数日後にもう一度サイトを見てみたら販売が再開されていて、すぐに内見を手配していただきました。その翌日には購入手続きを進めるというスピード感でしたね」と、ご主人。
近所の賃貸にお住まいだったことから、nuへ訪れる前に散歩がてらこのマンションを見に来ていたというKさん。テラコッタ色のタイルで包まれたマンションの外観や、緑が生い茂る共用広場にすっかり魅了されていたのだそう。「外の雰囲気がめちゃくちゃよくて。なかなかないこの感じに一目惚れしました」と、うっとりと振り返ります。
その後、物件の契約も順調に進み、リノベーションに向けてイメージ画像を集めたり間取りの検討を重ねたりと、設計MTGへ向けて準備を進めていったそう。
「nuさんは施工事例がすごくたくさんあるのに、いろんなテイストの空間を手がけられていて。私たちの思いをしっかり汲み取ってくれそうだなというのが、デザインからも伝わってきました」。「実は、職場の同僚がnuさんで物件探し+リノベをしていたことを途中で知って。その方が『すごくいいよ!』と太鼓判を押してくれたのも、安心感がありました」と、口々に話します。
こうして、初回プレゼンテーションの日を迎えたKさん。ヒアリングの際に伝えていた要望が落とし込まれたプランに加え、担当デザイナーはもう一つ、サプライズのプランを用意していたそう。
「『気に入るかわからないけど、私なりに考えてみました』と出していただいた3つ目のプランをみて、『うわ…!!(喜)』って。私たちの想像を遥かに超えた間取りと色使いで、完全に心を掴まれました」と熱を込めて語るお二人。
動かせないPS柱と一体的にデザインしたアイランドキッチンが主役の回遊プラン。家の顔である造作キッチンには、Kさんが共有していたイメージ画像には差し色としてしか入っていなかったテラコッタ色が、全面にあしらわれていました。
「このマンションの外観に一目惚れしたという、私たちの物件購入へ至った経緯をデザインに組み込んでくださったそうで。『すごく素敵。さすがプロだ!』と感動しました。プランも色使いも当初の方向性と全然違いましたが、ほぼ即決でした」と奥様。
設計デザイナーからの思いがけないプレゼントを受け取ったお二人。K邸の家づくりが一気に動き出した瞬間でした。
一緒につくる喜び
プレゼンテーションのプランをベースに、細部の納まりや設備、素材などを詰めていったというKさん。毎回2時間以上に及ぶ打合せの中で印象的だったのが、担当デザイナーの家づくりへの姿勢だったそう。
「どうしても私たちの集中が切れてしまう場面ってあるんですよね。コンセントの位置決めや設備の細かい仕様など…。そういう時に、『意外とここが大事なんです!』とデザイナーさんが僕たち以上にこだわってくれて。中には予算が上がってしまうような提案もありましたが、押し付けるわけではなくて」。「絶対に妥協しないデザイナーさんの姿勢に、“一緒につくっている”という実感が湧いてきて、嬉しかったよね」と、顔を身合わせて微笑むお二人。歩幅を合わせて、時にはリードしてデザインをまとめ上げていく姿が心に残っていると言います。
そんなK夫妻とデザイナーの思いが最も集結しているポイントは、なんといってもこの家の主役である造作キッチン。テラコッタ色のタイルは、表面に艶のない質感がイメージに最もマッチするものを選択。キッチンの側面や収納の建具はワントーン濃いテラコッタ色で塗装されています。「収納量もしっかり持たせたい」というお二人の要望から、PS柱の側面やカウンター下など、デッドスペースにも余すことなく収納をつくり込んでいきました。
柱に沿ってL字に設えたビールストーンの天板は、ダイニングカウンターを兼用。洗面の排水の関係でリビングがスキップフロアになっているため、ハイスツールではなくダイニングチェアでちょうどよく使える高さになっています。ちょっとした軽食や、今後お子さんが勉強するときなど、様々なシーンで活躍すること間違いなしです。
また、造作洗面台の壁面にあしらったタイルには白タイル×テラコッタ色の目地を採用。実はこの配色、キッチンタイルと反対色になっています。
「これ、可愛いですよね。デザイナーさんが提案してくださってすごく気に入っています!」と、ご主人も嬉しそうに笑います。
もう一つ、K邸の特徴的なデザインといえば、キッチンの奥にレイアウトされた寝室。三連の造作引き戸は袖壁に完全に引き込むことができるため、日中はフルオープンにしていることが多いそうです。
寝室周りの建具は既製品の建具に変更する案もあったと言いますが、寝室内の壁面収納をオープン仕様にするなど、別視点からコストコントロールすることで、Kさんが大切にしたかった素材感をしっかりと残したデザインにまとまっていったそう。
「寝室の収納は、少しラフさを感じる合板で造作しました。私たちが当初から取り入れたかった素材感だったので、LDKからも視界に入るたびにテンションが上がります。建具も、予算との折り合いを見ながら素敵なものを提案していただけて。妥協しなくてよかったです」と奥様。
入り口の引き戸は、当初は背の高いガラス引き戸を検討していましたが、お二人が以前訪れた金沢の宿『香林居』の雰囲気を取り入れ、あえて建具の高さを1.8mに。襖くらいのサイズ感とすることで和の要素をほんの少し加え、お籠り感や落ち着いた印象をつくり出しました。
「テラコッタの比率も、LDKの広さも、寝室の建具も、全体を通じて“中途半端にしない”ことにこだわりました。それが結果的によかったなと感じています。コストをかける場所・かけない場所のメリハリをつけたことで、LDKから視界に入る全てに妥協したところがなくて」と、ご主人。とことんやり切ることが、心がときめく空間づくりの秘訣だったようです。
「あ、幸せ。」
リノベーション後、この家で過ごしていると、ふと「幸せだな」と感じる瞬間が増えたと話すKさん。
朝日がのぼり、家族がLDKに集まってくる時間。日が暮れはじめ、夕食の準備をし始める時間。窓の外の風景から感じられる四季の移り変わり…。何気ない日常に耳を澄ます瞬間が増えたことは、リノベーション前後での大きな違いだと言います。
「特別なことはないんだけど、普通の毎日がこんなに幸せだって感じられる。そんな暮らしを、リノベーションを通じて手に入れることができたのが嬉しいですね」と、奥様。広々としたLDKに家族が集まり、各々の息遣いを感じながらそれぞれの時間を過ごすという、リノベーションを始める前から思い描いていた暮らしが実現したと嬉しそうに教えてくれました。
ご主人も同じ思いだそうで、「今まで以上に、ものを大切にしよう、家を大切にしようと考えるようになって。以前から掃除とか家事をするのは好きな方でしたが、この家の手入れをしていると『身近にあるものを大切にできている』という実感が湧いて、幸せだなって感じるんですよね」と続けます。
今後の展望について伺うと、大好きなインテリアを少しずつ買い足し、暮らしを愉しんでいきたいと微笑むお二人。
「ダイニングセットとソファは前の家から使っているものなんです。結構大きなソファなので、よくあの賃貸のリビングに入っていたねって(笑)。LDKが広くなったおかげで、好きだったインテリアもより好きになりました」。
「デザイナーさんのオススメで購入した<Vitsoe(ヴィツゥ)>のモジュールシェルフは、キャビネットパーツを追加したいねって話しています。ゆくゆくはテレビボードを兼ねたチェストも置きたいなとか…。ゆっくり検討して、少しずつアイテムを増やしていきたいですね」。
一目惚れしたこのマンションと、リノベでつくり上げた唯一無二の間取り、素材感、インテリア…。
K邸をカタチづくる全ての要素がバランスよく調和し、幸せで満ちた家族の日常を包み込みます。