こんにちは。
今日は「福岡市美術館」について書きたいと思います。
この美術館は建築家の前川國男氏によって設計され、1979年に竣工しました。
2016年から改修工事が行われ、2019年にリニューアルオープン。
前川氏の建築意匠を丁寧に継承しながら、時代に合わせたアップデートがされました。
館内にはレストランやカフェも併設されていて、公園の休憩所のような雰囲気。
地域の人々にとっては、美術館でありながら「集いの場所」としても機能しています。
場所は大濠公園の水辺に面しており、公園側にもエントランスが設けられています。
公園からの流れるようなアプローチが可能。
緑や水の風景と建築が調和しています。
エントランスに入ると印象的な吹き抜け階段が現れます。
吹き抜けに吊るされた照明は開館当時に特注で製作されたもの。
リニューアルの際に、デザインはそのままにLED化されました。
エントランスホール内の柱や天井はコンクリート躯体表しの仕上げ。
近づいて見てみると、ざらっとしています。
コンクリートの表面を削る「はつり」によって仕上げられており、
表面に独特なザラッとした質感が生まれます。
ホールの天井はヴォールト天井(かまぼこ型の局面天井)になっています。
照明はその局面に光を反射させることで、柔らかい光をつくり出しています。
この照明も特注です。

私が訪れた際は、アーティストのモナ・ハトゥム氏の新しい展示が公開直後。
砂を用いたインスタレーションで、一定の速度で回るバーが敷き詰められた砂面に模様を描いたり、平らに均したりを繰り返します。
「存在と不在」「生と死」「希望と絶望」などの対立・矛盾がテーマの作品なのだそう。
静かに流れていく時間を感じながら、いつまでも見ていたくなるような不思議な魅力がありました。
外壁の赤茶タイルは、打ち込み工法という特殊な施工方法で貼られているそう。
コンクリートを打つ前に、型枠の内側にタイルを敷き詰め、上からコンクリートを流し込みます。
そうすることでコンクリートとタイルが一体化し、時間を経ても剥がれにくく、陰影のある仕上がりになります。
この工法、実は東京都美術館でも使われています。
前川國男の美術館建築らしい特徴のひとつだと思います。
素材の質感や光の扱い方など、前川國男氏の美術館建築の真髄を感じられる場所でした。
福岡に行く機会があれば、ぜひ訪れてみてください。
