建具の種類いろいろ_内窓編
住宅に欠かせない建築要素である『建具』。
前回は“扉編”をお届けしましたので、今回はリノベーションで人気の内窓についてご紹介いたします!
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・内窓の種類、いろいろ
・内窓のメリット、デメリット
・アイデアいろいろ、内窓のデザイン集
内窓の種類、いろいろ
内窓には、そのつくり方によって大きく分けて①引き窓 ②FIX窓 ③すべり出し窓の 3つの種類があります。
一つずつデザインと特徴を見ていきましょう。
①引き窓
横にスライドさせるタイプの引き窓。
外壁に取り付けられることも多く、日本の住宅で最も馴染みのある窓のスタイルです。
開いた状態でも窓が邪魔になることがないので、大きな開口に適しているとも言えます。
・リノベーション事例:「towa」(東京都中央区)
リビングと子供部屋を隔てる壁に3連の引き窓を設け、個室の採光・通気を確保。
オリジナルで造作した8角形のフレームが部屋全体のほっこりとした雰囲気と調和して可愛らしい印象です。
・リノベーション事例:「feel free」(東京都文京区)
こちらも、リビングと個室を隔てる壁に内窓を設置することで、採光・通気を確保しています。
窓はスリット状に最小限に設けることで、個室のプライベート性を確保しています。
②FIX窓
FIX窓とは、開け閉めができない窓のこと。
開閉の機会のない高い場所や床に近い場所などに、採光等を目的として取り入れられます。
金具等がつかない分すっきりとしたデザインが叶えられます。
・リノベーション事例:「Atelier×シロイズム」(東京都中野区)
LDKとアトリエスペースを隔てる壁の上部を格子状のFIX窓としたA邸。
アトリエ側も腰窓に面していて通気性は確保できていたため、FIX窓で枠をすっきりとさせ開放感のみを取り入れるデザインとしました。
・リノベーション事例:「和〜nagomi〜」(東京都文京区)
リビングに造作した小上がりの上部に一枚ガラスの内窓を設えたこちらの空間。LDKから奥の個室まで続く木天井の連続性を魅せつつ、すっきりとした木枠でアクセントを効かせたこだわりのデザインです。
③すべり出し窓
外側へ滑り出しながら開く窓。②のFIX窓と組み合わせてデザインするケースが多く、いくつか連続して並ぶと海外の街中のような雰囲気を演出できます。
①の引き窓との違いは、レールが不要な点。通気性を確保しつつ、レールの溝のお掃除などの手間が省けるのはありがたいですね。
・リノベーション事例:「native」(埼玉県川口市)
ワークデスクの正面の壁をほぼ全面内窓とし、下部をFIX窓・上部をすべり出し窓とした事例。
ガラス面を多く取ることでコンパクトなワークスペースに開放感をもたらしています。
・リノベーション事例:「SHABBY 2nd」(東京都世田谷区)
こちらも、下部をFIX窓・上部をすべり出し窓としてデザインした内窓。
内窓の前にソファをおく想定だったことから、頭をぶつける危険性の少ない上部にすべり出し窓を設定しました。
内窓のメリット、デメリット
続いては、内窓を設置するメリットとデメリットを解説します。
■メリット
1.窓がない部屋や玄関まで光を届ける
内窓の最大のメリットは、採光を確保できるということ。
特にマンションは角部屋等でない限り外部に面する窓の数が限られてくるので、戸建のように各部屋に窓を配置するのが難しいケースもあります。
そういった場合にも自然光を部屋の中まで届けてくれる内窓は、ご紹介した3つのタイプの全てにおいて大きなメリットとなります。
2.空間の繋がりを演出できる
こちらも、壁にガラス面を取り入れるからこそのメリット。
ワークスペースや子供部屋、ご夫婦それぞれの個室などにLDKへ面する内窓を設えることで、各自の時間を過ごしながらも互いの雰囲気を感じ合うことができます。
・リノベーション事例:「live kitchen」(神奈川県茅ヶ崎市)
造作キッチンを中心に、向かって左側と奥にご夫婦それぞれの自室を設けたこちらのお宅。
それぞれが自室で過ごしているときもお互いの存在を感じられるよう、双方の個室に内窓を設えました。
個室側にはブラインドを設置することで、プライバシーもしっかりと確保。引き込んだ際のブラインドの溜まりや、隣接する開き戸と干渉しないよう各所の高さも綿密に考慮して設計されています。
■デメリット
・遮音性の低下
室内窓は壁に比べて音を通しやすいため、防音性能が低下する可能性があります。
場合によっては音の伝わりが気になるなどのデメリットが発生する可能性がありますので、生活リズムや、内窓でつながるお部屋通しの用途などをしっかりと検討した上で設置することがおすすめです。
・コストの増加
通常の壁だけの施工に比べると、内窓を設置する方がコストがかかる点も、設計デザインの段階で考慮するべきポイントです。特に、デザイン性の高いガラスやフレームを採用する場合には費用が大きくなる可能性も。他の箇所との優先順位をしっかりと見極めて設置するかどうかを決定しましょう。
アイデアいろいろ、内窓のデザイン集
最後に、nuリノベーションの施工事例の中から様々な内窓のデザインをご紹介します。
これからリノベーションで内窓の設置をご検討中の方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
<まるでセレクトショップのような内窓のある空間>
・リノベーション事例:「BRITISH×アンティーク」(東京都世田谷区)
深い森のような、ミステリアスなグリーンで全体を塗装して仕上げたリビング。
その一角に、内窓を設えたブラックのパーティションを造作したO邸。その奥は「夫婦揃って服が好き」というO夫妻のWICになっています。
重厚感のある色使いやモールディングの装飾、ヴィンテージな空気感を引き立てるアンティークキャビネットなど、徹底された世界観で彩られたWIC。
LDKから内窓越しに見るその空間は、まるでセレクトショップのショーウィンドウを覗いているような高揚感を演出してくれます。
<愛猫思いの独立キッチンの内窓>
・リノベーション事例:「STYLISH×SPICE」(東京都江東区)
2匹の愛猫と暮らすA夫妻。猫ちゃんたちの安全性も考慮し、キッチンはLDから独立したレイアウトでプランニングを進めていきました。
セパレートキッチンのシンク側をLD側に向け、正面に大きな内窓を設置。FIX窓や縦型の滑り出し窓を組み合わせ、採光や配膳時のスムーズな動線を確保しました。
<仕事の合間にリフレッシュをもたらす内窓>
・リノベーション事例:「清澄〜Seichou〜」(神奈川県横浜市)
プログラマーのご主人と、ゲームのUIデザイナーの奥様。
ご夫婦揃ってデスクワークの時間が長いお二人は、リビングと一続きに書斎スペースをレイアウト。
扉をつけていないため内窓がなくても通気性は問題ありませんが、採光などの面からもLDKとの境界壁に内窓を設置しました。
春には掃き出し窓から桜が見えるそうで、仕事の合間にふと顔を上げた時に見える自然の風景に癒されているのだそう。
最後に
「建具の種類」について、扉編・内窓編の2回に分けてお届けした「建具の種類いろいろ」シリーズ。
建具の交換や内窓の設置は、これからリノベーションをされる方はもちろん、すでにリノベーション済みでもポイントで取り入れていただけるデザインです。
建具を変更してお部屋の雰囲気を変えてみたいという方も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
よくあるご質問
Q1. 内窓にはどのような種類がありますか?
A.
内窓には、大きく分けて①引き窓 ②FIX窓 ③すべり出し窓の3つの種類があります。一般的な日本の家で馴染みがあるのは、横にスライドさせる引き窓ですが、室内窓として取り入れる際には使い勝手や室内窓を設置する目的から最適な窓の種類を選択するようにしましょう。
Q2.内窓を設置するメリットはなんですか?
A.
全てのタイプの内窓に共通するメリットは採光性と、空間同士のつながりを演出できる点。壁ではなくガラスで空間を仕切るため、奥の空間が見通せて別の空間にいても家族の存在を感じることができます。また、開閉が可能な内窓の場合は通気性を確保できる点も大きなメリットとなります。
Q3.内窓を設置するデメリットはなんですか?
A.
一般的に壁よりガラスの方が遮音性能が下がるため、隣り合う部屋の用途によっては音の伝わりが気になるケースも。また、通常の壁を立てるよりコストが掛かる場合がほとんどですので、内窓の造作・設置費用を見込んで全体のコストコントロールをする必要があります。