引き戸を納めるとき、
戸板のデザインと並んで印象を左右するのが、
上下に通すレールです。
一般的な既製品のレールは、溝幅がおよそ20mm。
3枚引き戸になると、
その凹凸は床や建具のラインの中で、
意外と強い存在感を持ちます。
では、引き戸の設えを引き立てる納まりは何か。
その答えは一つではありませんが、
レールを造作することで、
溝幅を約3mmまで抑えることができます。
私たちがつくる空間には、
そんな「機能を満たした、その先」への追求が潜んでいます。

■意思のある一手間
キッチン、洗面、壁面収納。
それぞれに独立した機能を持った要素であり、
一つ一つの使い勝手を追求することは、家づくりにおいて大前提。

でも、「シームレス」をコンセプトに据えたこの空間では、
それぞれがノイズなく連続していることも、
機能性と同じように大切です。

すべてを同じ木でつなぎ、
蝶番や取っ手などの金具も極力見せない。
素材が交わる場所まで丁寧に整え、
一つの空間としての連続性をつくっていく。
ほんのわずかな違和感が印象を左右するからこそ、
細部の納まりまで、コンセプトを通していきます。
■機能のない場所まで整える
キッチン背面にしつらえた、壁一面のカップボード。
静かな存在感を放つ佇まいの内側には、
構造上撤去することができない柱が包み込まれています。


柱の手前までの幅でぴったりと造作するだけでも、
収納量や使い勝手は十分に担保できます。
でも、その柱を「避ける」のではなく、
キャビネットと同じ設えで包む。
開かない部分にもスリットを入れ、
キャビネットと同じ分割のラインを通す。
機能だけを考えれば不要な材料と工程を加えてでも、
一つの大きな家具として見えるように整えていきます。

機能としてはすでに完成している。
大切なのは、その空間にとって何が最も自然かを考え、
必要ならば機能を満たしたその先まで手をかけること。
17mmの差も、機能を持たない一枚の板も、
そんな追求の先に生まれたひとつの形です。