アメリカンブラックチェリーの床と躯体表しの白い壁天井。アイランドキッチンを中心としたM夫妻の住まいは、コミュニケーションをつなぐシンプルな空間となりました。
水を感じられる立地
「友人がスケルトンからリノベーションをしたんです。その家を見に行った時にこれだ!と思いました。」そう話すのは30代のM夫妻。結婚をきっかけとして住宅購入を考え始めました。以前から知っていたリノベーションも、友人の自宅を見た事によってさらに惹かれていったと言います。「最初は新築も戸建ても考えてみましたが、値段は高いし、立地も限られる。だったら自由にできる方が楽しいかなと。」そうしてインターネットで検索した3社の相談会に参加しました。「わかんなかったんですよ、中古マンションを探すのが先か、リノベーション会社を探すのが先か…とりあえず話を聞きたくて相談会に参加しました。」担当者とのフィーリング、物件探しからアフターサービスまで一貫して出来るという点でnuを選んだと言います。物件探しの条件は、海沿いに住みたい!というのが一番の希望でした。購入する家であれば、ビル群の中ではなく、海や水を近くに感じられる土地がいいと考えていました。もう一つの必須項目はペットの飼育。M夫妻はお二人ともネコ好き。購入する家ではネコと一緒に暮らすことを前提としていました。その他の条件として、70平米程度の広さと駐車場をおさえた中で予算に合う物件は絞られてきました。購入した物件の正面には運河が流れています。水を感じられる事の他にも大きな建物が建つ可能性が低いというメリットもあります。また、大規模のマンションだったこともあり、管理や修繕も行き届いていたことも決め手となりました。
白い空間をよりシンプルに
プランニングに入りヒアリングをすると、広くて気持ちのいいアイランドキッチン、リビングは広く、将来はその一部を子供室として仕切りたい、お風呂ではゆっくり足を伸ばしたい、というのが主な要望でした。「”白”を基調としてできるだけシンプルにしてほしいかったんです。」“飽き症”だという奥様はシンプルな空間をその時の気分で気軽に飾りつけたり、変化させていきたいということでした。プランニングは一番優先順位の高かったキッチンから始めました。家の中心に配置されたキッチンはオーダー製作品。バックカウンターは調理器具や電化製品を置く場所とします。冷蔵庫置場の隣には食器棚を造作。全て”白”で統一しました。キッチンの天板は人造大理石。ガスコンロはハーマン製を選び、グースネックの水栓とビルトイン浄水器を組み込みました。プランニングの作業は、あれこれ迷う事が多くあったものの、進めていくにつれてだんだんとイメージが沸き、プランを煮詰めていくことができたといます。最終的に決まった間取りは1LDK+WIC+土間。ウォークインクローゼットは寝室、リビングの両方からアクセスできる2WAY。寝室とは区切る必要がないので、扉は設けずにアーチ型の入口としました。寝室は寝るだけだから広くなくていい、また、寝室はプライバシーの確保のため、共用廊下に面した窓を避けたい、という点から廊下側の窓は寝室にせず、玄関から続く土間収納のスペースにしました。お二人の趣味であるスノーボードや自転車などを収納します。土間と寝室はガラスブロックで仕切り、やわらかな光がもれるようにしました。将来増設する子供部屋はリビングを通って個室に入る導線を考慮し、キッチンの横に壁を設置できるようプランニングをしました。浴室も在来工法で造作しました。浴室はデットスペースが出来ないよう、パイプスペースを囲うようにして配置。足のゆったり伸ばせる置き型のバスタブを設置しました。床、壁は白いモザイクタイルで仕上げ、洗面室との間仕切りはクリアガラスにしました。「プランニングの段階ではガラスにフィルムを貼る予定でしたが、実際に見てみると気にならなかったのでクリアのままにしてもらいました。」味気ない既製品よりタイルで造作した一つしかない浴室が気に入っているといいます。廊下とリビングの床はアメリカンブラックチェリー。寄木張り(ヘリンボーン)で仕上げました。「元々の計画では普通のフローリングだったんです。フローリングのショールームを見に行ったら一目惚れしてしまい、絶対にこれが良いと思いました。」壁と天井は躯体表しに白塗装。”白”で統一した空間にアメリカンブラックチェリーのリズミカルなラインが一層際立ちます。
“なりたい自分”を実現する住まい
床材に使用されているアメリカンブラックチェリーは明るい琥珀色が特徴で、高級家具の材料ともされています。時を経て色が深まり、飴色の美しいツヤが増していきます。M夫妻がこの家に引っ越して待望の家族が2匹増えました。黒ネコは”サクラ”、ミケネコが”トメコ”。里親募集でこの家にやってきた2匹の子猫は元気よく部屋をかけまわり、気持ち良さそうに昼寝をしていました。ブラックチェリーが飴色に変わる頃には、増えた家族のそれぞれが家の中心となるキッチンを起点として生活をしていることでしょう。家族の集まる、顔を合わせる場所としてのキッチン。これから増えていく家族との関わり方を誘導していくためにもリノベーションは重要な役割を果たします。今の自分に対しても、将来なりたい自分と家族に対しても理想の生活を実現できるからです。