1回目のリノベから約4年後、住み替えたマンションで2回目のリノベーションを経験したT夫妻。東京の景色が一望できる、クラシックホテルの一室のようなお宅にお邪魔しました。
“2回目もnuリノベーション”
都会的ながらも下町情緒が感じられる街、三軒茶屋。駅から少し歩いた閑静なマンションの一室に暮らすのが施主のT夫妻です。「前の家は40㎡くらいで、2人暮らしには少々手狭でした。もちろん家自体に愛着はありましたが、ゆとりを持って暮らすためにも広い家へ住み替えたいと思ったのが今回のきっかけです」とご主人。実は以前お2人が暮らしていたのは、ご主人が独身時代にnuリノベーション(以下nu)でリノベした『CRAFT』というコンセプト名がついたお宅で、今回が2回目。リノベという選択肢の賢さや楽しさを知っているご主人にとって、賃貸や新築マンションへの引越しではなく、“2回目もリノベーション”が当たり前だったと語ります。当時の家を賃貸に出すことを決め、「またリノベするなら、やっぱりnuさんへ」と、以前担当だった仲介アドバイザーに直接連絡をくださったご主人。新しい家に求めた物件条件は大人2人が余裕を持って暮らせる70㎡以上の広さで、今と同じ三軒茶屋だということ。そして、大の料理好きである夫妻は「できれば家のすぐそばにスーパーが欲しい!」と仲介アドバイザーに伝え、物件探しを開始します。それから約半年後に出会ったのが今お住まいの90㎡超えの物件。ほぼ全面ガラスの2面採光で、周りに背の高い建物がないため眼下には目を見張るような東京の景色が広がっています。「少し予算オーバーだったのですが、この眺望が何ものにも代え難い決め手になりました」とにっこり笑うお2人。トータルで10件近く内見してきたそうですが、今までに見たどんな物件よりもこの物件にトキメいたそう。ここは前の家から自転車で10分ほどの距離にあり、変わらず馴染みがある場所に住めていることも嬉しいと話してくださいました。
厨房から見える景色
今回も以前の設計デザイナーがT邸を担当。2回目のリノベで、ご主人の好きなデザインを理解していたこともあり、あうんの呼吸で打合せを進めていきます。「デザイナーさんとは8割キッチンの話をしていた気がします(笑)料理をすることが好きなので、キッチンにこだわりと時間をかけました」と当時を振り返るご主人。部屋の広さが以前の倍以上になったことで、キッチンに割ける面積も広くなり、理想のキッチン像はますます膨らんでいったといいます。さらに、「リビングはシンプルな空間にして、キッチンとコントラストをつけた空間が理想。あと、前の家の市松模様のフローリングが気に入っていたので、今回も同じ張り方にしたいとデザイナーさんに伝えました」とお2人。白とブラウンをベースにシンプルに構成しながら床やキッチンなどの要所でこだわりを表現していくようなイメージで進めていきます。そして最終的に仕上がったのは2LDK+WICのプラン。玄関にはクリエイティブなアートやスケボーデッキが飾られ、リビング扉を開けると、スイートルームのようなゆとりある空間が広がっています。「せっかく広い家に引越したのだから」と、元々リビングと和室だった2つの空間をひとつながりにし、20畳超えのLDKを確保。2面の大きな窓からも視界が抜け、実際の面積以上に広がりを感じます。空間にどことなく漂うレトロさを掻き立てているのは、床と天井の仕上げ。市松模様に張った無垢オーク材の床は、以前の家と同じ色ツヤをチョイス。天井には格天井(ごうてんじょう)という日本の伝統的な天井様式を採用しました。色塗装を施さない木色の格天井がスタンダードですが、あえて白く塗装することでモダンな印象を与えています。「天井のデザインは、出先のホテルで見たものを参考にデザイナーさんへオーダーしました。床との相性もいいと思ったので」とご主人。ハコ自体はいたってシンプルですが、床と天井に個性を持たせ、クラシックホテルのような気品と懐かしさが入り混じった空間を演出しました。
リビングから少し奥まった場所につくったキッチンスペース。業務用のキッチンに、ずらりと並ぶフライパンや調味料の数々はまるでバルの厨房のよう。ラフな雰囲気をまとったキッチンはリビングスペースとのコントラストも引き立ち、特別な色を放っています。「料理好きの友人が業務用キッチンを使っていて、色々話を聞いてるうちにいつか自分の家にも欲しい!と思っていたんです。普通のガスコンロより火力が強力的なのが嬉しいポイント。使い勝手はもちろん、掃除もしやすいですね」とT夫妻。冷蔵庫に関しても、コールドテーブルという飲食店などで導入されている作業台兼冷蔵庫を取り入れていて、とにかく本格的。「業務用キッチンにすることだけは決めていたのですが、一番悩んだのはレイアウトです。来客の際にゲストと会話ができるスタイルは欲しかったので、一部がリビングにひらけたこの配置に落ち着きました」とご主人。これまで一度に10人くらいの友人たちが遊びにきたそうですが、ご主人が振る舞った料理を食べながらお酒を飲むというのが定番の過ごし方なのだそう。「最近はyoutubeの料理動画を見て、新レシピを研究したりしてるよね!」と奥様と笑い合う姿が印象的でした。
どこまでも続く、夜の調べ
取材も終盤に差しかかった頃、「じゃぁそろそろ」とキッチンへ向かうご主人と奥様。お言葉に甘えて、ディナーをご一緒させていただきました。マリネやニョッキ、創作ピザなどお料理が運ばれてくる度に「美味しそう~!」「次は何系のピザが食べたい?」とみんなで盛り上がります。キッチンを中心に楽しそうな空気が充満するT邸には、リノベーションの醍醐味である“自分たちの好きを反映させた暮らし”がまさに描かれていると感じました。
美味しい手料理とお酒を飲みながら、「2回目のリノベは、1回目と比べてどうでしたか?」と尋ねると「ある程度の流れが分かっているおかげで気持ちに余裕ができて、より楽しめました。今回は扉を自分たちで塗ったり、部分的にDIYも取り入れたので愛着が増しています」とT夫妻。「前の家も今の家にも遊びに来たことがある友人から、『ちょっと前と雰囲気似てない?(笑)』」と言われたのですが、今回も取り入れたこの市松模様の床の雰囲気やキッチンに重きを置いているところとか。2回目のリノベで、より自分の好きなものが明確になった気がします」と笑顔で締めくくってくださったご主人。
どこまでも広がる輝かしい夜景、そしてレコードからは耳馴染みの良い音楽が流れるT邸。そこにはいつまでも愉快で心地よい雰囲気が漂っていました。