ガラスブロック・ビールストーン・ステンレス・タイル・和紙など、異素材が同居するユニークな空間。最高の形で住み継いだご実家には、新たな笑い声があふれていました。
8年前の出会い
歴史的建造物が立ち並ぶ、豊島区の住宅地。ここに立つ築20年の戸建をリノベーションしたYさん一家は、ご主人はスケートボードショップの店長と映像クリエイター、奥様は美術大学出身で出版社勤務という、芸術肌のご夫婦です。生後6ヶ月のお子さん、ラブラドールレトリーバーのポテトくんと一緒に、にぎやかな日々を送っています。
この家はもともとご主人のご実家で、結婚をした8年ほど前からご夫婦と当時は2匹だった愛犬と住んでいましたが、床や壁の老朽化が気になっていたそう。そこで、奥様の妊娠を機に新しいスタートを切ろうと、リノベーションに踏み切ったと言います。
リノベーション会社選びは、nuリノベーション(以下、nu)一択だったと言う奥様。実は結婚当初からnuのインスタグラムを見ていて、ずっとnuに依頼したいと思っていたそうです。8年間温めた思いを胸に、約1年前、遂に恵比寿のnuオフィスを訪れました。
「夫から『一応、他の会社も見た方がいいんじゃない?』と言われて、この家を建ててくれた工務店にも話を聞いたり、知り合いの設計士も検討したりしていたんです。本当はnuの訪問後にも少し他社比較しようと思っていましたが、実際にnuで話を聞いたらすごく印象がよくて、『もうここで良くない?』って」と、奥様。ご夫婦と同年代のスタッフが多く、話が通じやすかったことも良かったそう。
「最初に担当してくれたアドバイザーさんは、ハキハキしているけど全く押し売り感が無くて、すごくスマートでした。ご自身も自邸をnuでリノベーションしていて、それについて書いたリノベ日記(※)も見せてくれて。リノベーションやインテリアにものすごく興味があることが伝わって来て、信頼が持てました。この人たちと家づくりをしたらすごくいいだろうなって」。
こうして、8年間膨らませてきた良い予感が確信に変わったYさん。いよいよリノベーションがスタートしました。
ユニークの追求
Y邸は3階建てですが、今回はメインで使用する1~2階のみリノベーションすることに。元々個室があった1階にワークスペースや寝室を配置し、LDKがある2階はとにかく開放感がある空間を目指しました。
「木・モールテックス・ステンレス・和紙・クリアなど、異素材をたくさん組み合わせたくて。ゴチャっとしているのに不思議と馴染んでいる、そんなNYの家のような空間をイメージしていました」と、奥様。家具についても明瞭で、購入を熱望していた<フリッツ・ハンセン>のラウンドテーブルを置く想定で設計を進めていったのだそう。
そんな奥様の想いに対して、設計デザイナーは『シロ+』というコンセプトをご提案。真っ白なキャンバスに絵を描くように、白を基調とする空間の中で、こだわりの要素がお部屋のアクセントになるような空間をデザインしていきました。
LDKはどんな素材にも合うよう、壁と天井は白塗装、床はニュートラルなナラのフローリングを採用しています。各フロアをつなぐ階段は、既存利用した踏み板をモールテックスで仕上げ、階段を隔てていた壁を撤去。オープンになったことで、新しい空間との一体感と開放感を出しました。
最も素材を遊んだのは、洗面台です。ガラスなどの様々な骨材を包める左官塗材<ビールストーン>を使い、カラフルで唯一無二のデザインに仕上げました。
「世田谷美術館の倉俣史朗展で見た<スターピース>のデスクをすごく気に入ってしまって。デザイナーさんに『これ、ビールストーンを使って同じようなデザインにできますか?』と相談したら、できますよって。職人さんと相談しながらガラスなどの骨材を入れて、サンプルを4回ほど作ってもらいました。面白かったし、かなりいい感じに仕上がって大満足です」と、奥様は笑います。
奥様が最もこだわったというキッチンは、リビング全体を見回せる配置に。LDKが白くなりすぎないように、キッチン台の腰壁にはモールテックス、天板にはセラミック、壁にはグリーンの大判タイルを採用しました。セラミック天板は熱いものも置けて、清掃性も抜群。高さは身長に合わせて少し高めのH90cmにしたことで、とても使い勝手が良いそうです。
ちなみに、キッチン壁のタイルは、ロエベのポップアップイベントで見て惚れ込んだグリーンタイルを模したもの。同じタイルは輸入が必要だったため、似たような商品を設計デザイナーに探してもらったそうです。
「この暗緑色は織部(おりべ)色と言って、焼き物の織部焼に由来しているんです。モダンなのにどこかレトロ感もあって、時間が経ってもダサくならなそうだなって」と、奥様。目がチカチカしないように、サイズは45cm×45cmの大判をセレクト。目地は白ではなくグレーを採用して、コントラストを抑えたというからさすがです。
その他にも、nuの施工事例を見て憧れていた玄関土間を設けたり、1階のワークスペースにガラスブロックを採用したり、ポテトくんのトイレエリアには消臭効果のあるエッグペイントを採用するなど、リノベーションならではのアイデアを大いに取り込んだYさん。「デザイナーさんが提案してくれたアール開口やアール壁は、空間の圧迫感を軽減できるし、抜け感が出てすごく気に入っています。そもそも、私たちにはアールという概念がなかったので、提案してもらったとき感動しました」と、奥様。
こうして、デザイン性と快適性を両立した、ユニークな空間が完成しました。
ビジュ、最高
竣工からわずか2カ月ながら、すっかり家具も揃っているY邸。ほぼ壁が無い開放的な空間で、ポテトくんは息を切らしながら走り回っています。
「リノベをしてすっごく暮らしやすくなったし、毎日気分が上がります。『今日もキッチンのビジュ(ビジュアル)いいな』と思いながら料理を始める、その瞬間が最高ですね。やることが終わって、リラックスしながらリビングとキッチンを眺めているときに、リノベして本当によかったと思います」と、奥様。憧れが詰まった空間で暮らしていると、雨の日でさえ「いい感じ」と思えるそうです。
思い切って新調した家具は、全てがお気に入り。前述のとおり設計段階から入れ込んでいたフリッツ・ハンセンのラウンドテーブルの上には<HAY>の和紙照明を吊るし、長年憧れ続けていた<イームズ>のチェアを合わせました。<NOYES>のソファはカバーが丸洗いできるから、ポテトくんの毛が付いても問題なし。今後は同じく憧れ続けているチェスカチェアを筆頭に、もっと色んな家具を迎えて、雰囲気を変えていく予定です。
一方ご主人は、ご自身の希望を反映したワークスペースで映像制作の仕事をしたり、音楽を作ったりしている時間が至福だと言います。長年ご実家に蓄えられてきたものを一斉に断捨離し、空間もスッキリ一新したことで、早く家に帰りたいと思うようになったそう。
「nuのスタッフさんは、やらない方がいいことはハッキリ言ってくれたし、妊娠中の私に配慮してスピーディーに進めてくれました。決めるものが多すぎてドキドキしていたけれど、その場でドンドン決めてくれて、持ち帰りになることが本当に少なくてありがたかったですね」と、奥様。
希望した商品が採用できなくなっても、あらかじめ代替案を探した上で連絡をくれたので、基本的に1回のやり取りで完結したことも良かったと言います。さらにご主人が続けます。
「こちらの希望をなるべく実現するように動いてくれたのが、本当に嬉しかったですね。僕はリノベに興味なかったのに、常にワクワクしながら進められて、徐々にこだわりが出てきました。まぁ、家庭円満の秘訣は妻が幸せなことなので、妻が満足しているのが何よりです(笑)」。
今後はさらに友人を招き、キッチンを囲みながらお酒を楽しみたいと笑う奥様。ご主人の大切なご実家には、これからも新たな家族の思い出と笑い声がプラスされていきます。
Interview & text 安藤小百合