部屋の印象は床で9割決まる?空間にあった床材の選び方
部屋の中でも面積の広い床、壁、天井の色や素材感は、空間全体の印象を大きく左右します。
今回はその中でも「床」にフォーカスし、代表的な床材の種類とそれぞれの特徴を、実例を交えてご紹介します。(この記事は約8分で読めます。)

物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・フローリング
└ 無垢、複合の違い
└ 樹種、張り方の違い
・タイル
└ 磁器質、塩ビの違い
・左官仕上げ
└モルタル、モールテックスの違い
・カーペット
・【実例4選】床材別リノベアイデア
フローリング
フローリングとは、細長くカットされた木材を並べてつくる床のこと。
この章では、床材にフローリングを選ぶ際に気をつけたい素材の特徴やデザインのポイントをご紹介します。
■無垢、複合の違い
フローリング材には大きく分けて「無垢フローリング」と「複合フローリング」の2種類があります。
・無垢フローリング
木から必要な長さで木材を切り出し、そのまま製材したフローリング材のこと。
気温や湿度による収縮で隙間や反りが発生することもありますが、天然素材だからこその風合いと肌触りを感じることができます。
・複合フローリング
ベニヤ板を貼り合わせた合板の表面に、薄くスライスした無垢材を貼り付けたフローリングのこと。
季節ごとの暴れが少なく、コストカットも期待できるのが最大の利点。一方で、鋭利なものなどを落として表面を傷つけてしまうと修復が効かない点には注意が必要です。
■樹種、張り方の違い
一言で「フローリング」と言っても様々な樹種、張り方があり、好みに合わせて多様な選択肢から選ぶことができます。
<代表的な樹種>
下の写真の4つは、フローリングとして採用されるケースの多い樹種です。
木目の風合いや色、足触りなどがそれぞれに異なるため、お持ちのインテリアやリノベーションでつくりたい雰囲気に合わせて選びましょう。
△(左上)オーク、(右上)チーク、(左下)クリ、(右下)バーチ
<代表的な床の張り方>
・定尺/乱尺張り
同じ長さのフローリングを規則的に並べていくのが定尺張り、長さの異なるフローリングを組み合わせ、継ぎ目がランダムに入るようにする張り方が乱尺張りと呼ばれます。
△乱尺張り
・ヘリンボーン張り
短い床材をV字に連ねていく張り方で、床そのものにデザイン性を演出することができるため、印象的な空間づくりが可能です。
定尺張りや乱尺張りと比べて材料費が高く、熟練した技術も要される張り方となるため、全面的に採用する場合はコストボリュームが大きくなるケースも。
・すだれ張り
同じ長さの床材を、継ぎ目を合わせて張る工法。横のラインが強調されるため、よりすっきりとした雰囲気をつくることができます。
・パーケットフローリング
木を寄せ合わせて模様をつくった床材のピースを並べていく張り方。市松模様が最もメジャーですが、幾何学的なデザインなど様々な種類があり、雰囲気に合わせて選定が可能。
○無垢フローリングを取り入れた事例
・リノベーション事例:「antique×ダウンフロア」(神奈川県横浜市)
ダイニングキッチンに無垢チークのフローリングを採用したK邸。アンティーク家具がお好きなKさんは、経年で床の表情が変化していくのを楽しみにしているんだとか。
あえて段差を設けたK邸では、無垢チークのフローリングが張り合わされた断面をリビングから眺めることができます。リノベーションならではの面白いアイデアですね。
○複合フローリングを取り入れた事例
・リノベーション事例:「スカンジナビア×artistic」(東京都渋谷区)
大好きなアアルト邸を参考に、カバ材の複合フローリングを板の先端を25mm幅ずつずらしてリズミカルに張り込んだT邸。猫を飼うことを前提としていたため、お掃除のしやすさも床材を選定する上での優先事項だったんだとか。
<フローリング床がもたらす空間イメージとメリット>
・有機的な自然素材ならではの温かみを感じられる
・樹種によって木目や節の有無が異なり、高級感〜ラフまで様々な印象を演出することが可能
・表面を塗料やオイルで塗装することで、印象を変化させたり耐久性を高めることも可能
タイル
土足で歩く場所にも使われるほど頑丈で、掃除がしやすい点も魅力のタイル。耐久性に優れており、一般的に水回りに用いられることが多い素材ですが、最近ではLDKなどの居住スペースに採用するケースも増えています。
■磁器質、塩ビの違い
タイル床の素材は大きく分けて2種類あります。
写真で見ると違いが分かりにくいですが、実物は使い勝手や質感などに大きな違いがあります。
・磁器質タイル
石材や粘土を焼成してつくる素材。メンテナンスが容易な点はメリットですが、固いものを落としたり、地震等の揺れによって割れてしまうケースもあるため、扱いには注意が必要です。
・塩ビタイル
プラスチック樹脂を原料とする薄い板を規格サイズに成型加工した床材。磁器質タイル特有の割れのリスクを回避しつつ、タイルのシームレスな仕上がりを実現することができます。
○磁器質タイルを取り入れた事例
・リノベーション事例:「365DAYS」(東京都江東区)
愛犬「すもも」と暮らすSさんご夫婦。以前お住まいだったご自宅では、愛犬がフローリングの上を滑って上手く歩けず苦労していたんだそう。
そんな背景から選んだ磁器質タイルはペットの足腰への負担を考慮して開発されたタイル材で、グリップが効いて滑らないだけでなく、夏はひんやり、冬は床暖房でポカポカです。
◯塩ビタイルを取り入れた事例
・リノベーション事例:「アナログ」(埼玉県さいたま市)
LDKから廊下にかけて、床に水色の塩ビタイルを採用したF邸。
artekを始めとした北欧インテリアを収集されており、当初は木目調の床にする予定でしたが、設計デザイナーからの提案でやさしい水色のタイルを採用しました。
<タイル床がもたらす空間イメージとメリット>
・インテリアが引き立つ、アートギャラリーのような静謐なデザインが可能
・メンテナンスが比較的楽
・色・柄が豊富で、イメージにあった床材を見つけられる
左官仕上げ
シームレスな仕上がりとその強度の高さから、根強い人気を誇る左官仕上げ。マンションの床にも施工がしやすい左官材「モールテックス」の登場以降、より人気が高まっています。
■モルタル、モールテックスの違い
・モルタル
セメントを塗り固めて仕上げる左官材。遮音性がなく重量があるため、マンションの居住スペースの床材として採用することは少なく、玄関土間やインナーテラスなどに部分的に取り入れるケースが多い素材です。
・モールテックス
モルタルの成分に特殊な樹脂を配合することで、柔軟性や強度、防水性に優れた左官材。白やベージュなど、カラーバリエーションも豊富なところも魅力的。濃淡を選ぶこともでき、より繊細に空間をデザインすることができます。
○モルタルを取り入れた事例
・リノベーション事例:「MORTAR POT」(東京都江東区)
思いきってワンルームの床全面に敷いたモルタル。無機質で荒っぽい質感だからこそ、グリーンの生き生きとした表情が美しくみえます。時間とともに生まれた小さなヒビにも愛着が湧きそう。
◯モールテックスを取り入れた事例
・リノベーション事例:「COZY×KITCHEN」(東京都杉並区)
床の素材に、全面的にモールテックスを選んだM邸。
継ぎ目のない仕上がりがアートギャラリーのような静謐な雰囲気をつくり出す反面、ベージュの温かな色味がカラフルなインテリアやアールの意匠と響き合い、M邸特有の空気感をつくり出しています。
<左官床がもたらす空間イメージとメリット>
・継ぎ目のない、シームレスで無機質な印象
・色の濃淡やコテ跡の表現で唯一無二の空間づくりが可能
・家具の合わせ方によって、上質にもラフにも空間を演出することができる
カーペット
クッション性があり、防音性や衝撃吸収性に優れたカーペット。素足でも心地よく、包まれるような安心感をもたらしてくれます。
「汚れやすそう」「掃除が大変そう」など、ネガティブなイメージを持つ方もいますが、毛足の短いものを選んだり、防汚加工されているものを採用すれば、メンテナンス性を保つ事も可能。
子供部屋やくつろぎスペースの床材にぴったりの床材です。
◯カーペットを取り入れた事例
・リノベーション事例:「ととのい」(東京都江東区)
ホテルライクな寝室の床にカーペットを採用したK邸。
以前から「素敵だな」と思うインテリアに共通していた要素がカーペットだったことから、当初からカーペット床を採用したいとリクエストしていたそう。
朝晩も足元がひんやりせず、冬場は特にカーペットにして良かったと実感しているといいます。
<カーペット床がもたらす空間イメージとメリット>
・衝撃を吸収してくれるため、キッズルームや寝室におすすめ
・ファブリック特有の温かみのあるインテリアづくりが可能
・汚れた際の張り替えなどは、比較的容易でメンテナンスがしやすい
【実例4選】床材別リノベアイデア
それでは最後に、nuの施工事例の中でも、特に床材にこだわってリノベーションを行った事例を5つご紹介します。
先に紹介した素材以外を採用している空間もありますので、ぜひ床材ごとのお部屋の印象の違いに注目してみてくださいね。
CASE1 | バーチフローリング×ベージュカーペット
・リノベーション事例:「Atmosphere Design」(東京都世田谷区)
「木材の質にはこだわりたかったので、バーチ材には惜しみなくコストをかけました」と話すTさん。
ダイニングキッチンや廊下、寝室などメインの床材には明るく淡い色彩のバーチフローリングを採用し、北欧の家を思わせる洗練されたあたたかな雰囲気をつくり上げました。
くつろぐ空間であるリビングはベージュのカーペットで張り分け、ソファ・床座・ヌックなど、その時の気分で自由に過ごせる空間に。
CASE2 | モールテックス×塩ビタイル
・リノベーション事例:「ハレとケ」(神奈川県川崎市)
広々としたワンルームの床を全面的にモールテックスで仕上げたN邸。
無機質な空間に、インテリアや造作収納で木の素材感をプラスしています。
リビングからワークスペースまでを横断するシェルフもモールテックス仕上げとし、統一感を演出。
一方で、壁で囲われたキッチンスペースは水や油がはねてもサッと拭き掃除ができる塩ビタイルを採用し、暮らし心地を追求しました。
CASE3 | 磁器質タイル×磁器質タイル
・リノベーション事例:「Dear Alvar」(東京都江東区)
赤茶色の磁器質タイルを全面に敷き詰めたS邸。木目調の壁ともマッチして、あたたかみのある空気感をつくり出しています。
そんなS邸では、設計デザイナーからの提案で窓辺のインナーテラスと寝室の床は、白い磁器質タイルを採用。
窓から入る自然光が部屋の中にふんわり反射して、シックで落ち着いた空間にやさしい明るさをもたらしています。
CASE4 | リノリウム×畳
・リノベーション事例:「SOZAI×JAPANDI」(東京都葛飾区)
窓辺に設えた畳のスキップフロアが印象的な空間。ゴロンと横になったり、段差に腰かけたりと、自由な過ごし方ができるよう設えました。
一段下がったダイニングキッチンの床にはリノリウムのシート材を採用。
天然素材を原料としているため、自然な風合いはもちろん、抗ウイルス効果や脱臭効果が期待できる点も魅力的な素材です。
最後に
見た目の印象だけでなく、踏み心地や質感によっても住む人の気分を大きく変える床材。
常に体が触れる場所だからこそ、部屋の用途や演出したい雰囲気に合わせて床材を選びましょう。
nuでは実物の素材に触れることができるリノベーション完成見学会を開催しています。
写真だけでは伝わり切らないリノベーション空間を体感したいという方は、ぜひ一度ご参加ください。
よくあるご質問
Q1. リノベーションで使うことが多い床材はなんですか?
A.
リノベーションでは王道のフローリングやカーペットだけでなく、タイルやモルタル、サイザル麻など様々な素材を床材として使用します。特に水回りにはタイルやモールテックス、玄関土間にはモルタルなど、家の中のどのエリアに使用するかによって適した素材が異なります。
Q2.フローリングの種類と特徴とは?
A.
フローリングは大きく分けて「無垢フローリング」と「複合フローリング」に分けられます。経年とともに表面の色が深まっていくのは天然の木ならではのメリットですが、収縮が大きく反りや隙間ができてしまう可能性も。一方複合フローリングは集成材にスライスした無垢板を貼り合わせているため季節による収縮は比較的ありませんが、表面を傷つけてしまうと修復が難しい点には注意が必要です。
Q3. タイルの種類とそれぞれの特徴とは?
A.
タイルは大きく分けて「磁器質タイル」と「塩ビタイル」に分けられます。石英・長石と粘土を合わせて焼き上げた磁器質タイルはその硬さが特徴で、メンテナンスが容易な点はメリットとなりますが割れてしまうリスクもあるため、扱いには注意が必要です。
プラスチック樹脂を原料とする塩ビタイルは、磁器質タイル特有の割れのリスクを回避しつつ、タイルのシームレスな仕上がりを実現することができます。色や柄が豊富で、土足で歩く場所にも使われるほど頑丈でお掃除しやすい素材のため、キッチンや洗面室など水回りで人気の高い素材です。
Q4. モルタルとモールテックスの違いとは?
A.
セメントを塗り固めて仕上げるモルタルは、ヒビ割れを起こしやすい点や、モルタル自体には遮音性がない点が床材として採用する際のデメリットでした。一方でモルタルの成分に特殊な樹脂を配合したモールテックス材は、柔軟性や強度、防水性に優れ、モルタルの弱点をカバーできる素材として注目されています。しかし、その分費用はモルタルの2倍。実現したいイメージとコスト感のバランスを見て取り入れたい素材です。
Q5. カーペットのメリット・デメリットとは?
A.
ファブリック特有の温かみのあるインテリアをつくれる点や、フローリング等の床材と比較して張り替えなどのメンテナンスが容易である点は大きなメリット。一方、食べこぼしや飲み物をこぼしてしまった際は汚れが取りづらいケースもあるため、選定の際には毛足の長さや目の細かさなど、用途に応じて慎重に素材を選定しましょう。