
黒の磁器質タイルとオーク材がアクセントの、クールで品のある空間。二世帯住宅をリノベーションした暮らしには、安心感と満足感が溢れていました。
希望が見えて
ご夫婦ともにIT企業に勤めるMさんは、6歳の長女との3人家族。築31年のご主人の実家をリノベーションして、70代のご両親と2世帯同居しています。
Mさんは以前、同じ区内の賃貸マンションに住んでいましたが、その部屋は持ち主が転勤中だけ貸し出している定期借家だったため、次の住まいを探す必要がありました。マンション購入も考えたものの、“実家での2世帯同居”という選択肢がふと頭をよぎり、ご両親に話を持ち掛けてみたそうです。
「実家もそろそろリフォームのタイミングだったし、私たち夫婦の勤め先からも近くて立地も良い。同居すれば子育ての面でも両親の力を借りられるし、何より費用面でもコスパが良さそうだなと」と、ご主人は振り返ります。
そもそもこの土地は、かつてご主人の祖父母が購入して家を建てた場所。そしてこの家は、30年前に2世帯住宅に建て替えて祖父母とご両親が住んでいた家で、ご主人も13~22歳の年月をこの家で過ごしたそうです。ご両親との話し合いの結果、リフォーム・リノベーションをしてから同居することに。こうして、戸建にも対応しているリノベーション会社を探すことになりました。
もともとは大手ハウスメーカーで建てた家なので、まずはそのメーカーのリフォーム部門に相談。プランや見積りまで出してもらったものの、既存状態からあまり変化がないプランで、ワクワクできなかったと言います。
「提案内容が、リノベーションというよりリフォームなんですよね。かなり時間がかかったし期待していたので、ガッカリしてウツウツとしてしまって…」。
夫婦そろって意気消沈していましたが、すでにリノベーションを経験していた友人がオススメの会社をいくつかピックアップして提示してくれたことで、事態が一気に好転。nuリノベーション(以下、nu)を含む計2社に絞り、相談に行ってみたそうです。
「nuさんは、スタッフのやる気が他社と比べて全然違いました。最初にお話ししたアドバイザーさんは、デザイナーじゃないのにリノベの知識が豊富で、早い段階から斬新なアイデアをたくさん提案してくれたんです。それで、私と夫の気分がウワッと盛り上がって!ようやく希望が見えた感じがしました」と、奥様は笑顔で話します。
検討の結果、1階のご両親世帯は前述のハウスメーカーでリフォーム、Mさん世帯の2~3階はnuでリノベーションすることに。こうして、長きに渡った会社選びが終結し、安心感と高揚感の中でリノベーションが始まりました。
本当に好きなのは
リノベーション該当部の2~3階は総面積104.9㎡と、3人暮らしのMさん一家にとってゆとりのある広さ。デザイナーとMさんは一緒にベストな間取りを追求し、2階はLDK+水回り(洗面室・浴室)、3階は洋室2部屋+WIC+トイレとし、トイレにはしっかりとした洗面スペースも確保することで家族のライフスタイルにより合った間取りへとアップデートしました。
また、内装面にはこんなエピソードが。「最初にnuさんの事例で好きなものをいくつかピックアップしたんですけど、当時は『家族が住む家は白がいいよね』という優等生的な固定観念があって、白ベースで明るくてファミリーっぽい雰囲気の事例ばかり選んでいたんです。でも、色々とお話ししていくうちに、私は実は黒っぽくてカッコイイ家が好きだと分かって。序盤でこのことに気付けたのは大きかったですね」。
2階の造作キッチンは壁付けで、ダイニングキッチンを広く使えるように。幅3420mmと圧巻のワイドスパンで、Boschの食洗機も搭載し、キッチン台の横にはパントリーも設置しました。天板は黒の人工大理石、面材は木目調でスタイリッシュな印象に。キッチンとLDの壁一面には600mm×600mmと大判の黒い磁器質タイル、床には黒の塩ビタイルをポイントで採用し、全体をクールな雰囲気で仕上げました。
また、ダイニングの一画には木のルーバーで隔てられた奥様のワークスペースも設け、在宅ワークと家事の行き来もラクになったと嬉しそうに話します。
2階のメインの床材はフローリングで控えめな温もりをプラスし、L型ソファが堂々と置ける広さに。LDKの入り口と洗面室の建具はガラスタイプを採用することで、視線と光が抜けるようにしました。洗面台はグレーの人工大理石とスタイリッシュな洗面ボウルで造作。ご主人唯一の希望だった“広い風呂”を実現するべく、既存のトイレは取り払ってそのぶん面積を浴室に譲り、ゆったりとしたサイズ感の1618サイズのユニットバスを採用しました。
外階段から入る2階の玄関は、出かける際の渋滞を防ぐために横に広い土間に。靴がたっぷり仕舞える可動棚も造作しました。
2階と3階を繋ぐ階段は、LDKのデザインとの連続性を意識して、蹴上(けあげ)を黒塗装、踏面(ふみづら)を木に。この物件のコンセプトである『layer』が最も体現されており、家族が集う2階とプライベートな3階、その2つの層を心地よく繋ぐ役割を担っています。
3階に上がってすぐ正面には、洗面台とトイレが一体の空間を設置。飼っているめだかの水槽をドンと入れて洗えるように、洗面ボウルは実験用シンクを採用。洗面室とトイレを同じ空間にしたのは、建具のスペースを削減し、トイレ空間を広く取るためです。
子ども部屋は、ベージュの壁紙とモカ色の床でかわいい印象に。夫婦の寝室の入り口にはWICを設置し、衣装持ちの奥様にも安心な大容量収納を実現しました。寝室の壁面には本棚を造作し、この部屋に一部突出している階段の凹凸を利用して腰掛も造作。ずっと欲しかったというライブラリースペースまで実現しました。特に気に入っているのは、奥様がショールームに5回通って厳選した寝室の壁紙。デザイナーが取り入れたステンレスの見切り材(異なる床材の切り替わり部分につける化粧材)も、目に入るたびに嬉しくなると言います。
住み継ぐ幸せ
“本当にしたい暮らし”と、とことん向き合って完成した新たな我が家。実際の暮らしがスタートして、日々その心地よさを実感しているのだそう。
「めちゃくちゃ気分が上がっています。収納の収まりも良いし、料理ものびのび出来るし、とにかく暮らしやすい。キッチンの作業スペースをかなり広くつくってもらったので、つくり置きをするときもタッパーをズラッと並べられるし、作業台を身長に合わせて高めにしてもらったので、身体もラクです。何より食洗機が最高!洗い残しもないですし」と、奥様。賃貸時代はダイニングテーブルで在宅ワークをしていましたが、今はワークスペースがあるおかげで、テーブルを片付けることなくすぐ仕事に取り掛かれるのが便利だと言います。
「ラクになったことって、改めて聞かれるとすぐに思いつかない(笑)。それだけ不満や不便がなく自然に暮らせているということですね」と、ご主人は笑います。
インテリアは、nuのインテリアスタイリングサービス<decoる>を活用。ダイニングに置いたYチェアと柏木工のチェア、セクトデザインの照明オクト、リビングに置いたレクリントのフロアランプ…どれもお気に入りです。ダイニングテーブルは、ご自身で購入したアトリエ木馬の一枚板テーブル。カウチソファに目をやると、娘さんがのびのびと足を伸ばしてテレビ鑑賞しています。
また、送り迎え無しで娘さんの子育てサポートを受けられることに2世帯リノベーションの恩恵を感じているというMさん。週末の朝は、娘さんが自主的に1階のご両親世帯に降りて行って、そちらで朝食を食べているそうです。おかげでMさんはゆったり夫婦時間を持てるし、ご両親も喜ぶし、一石二鳥なのだとか。もちろん、物件費用がかからなかった分をリノベーションやインテリアに回せたことも大きなメリット。全員の満足度が高い2世帯住宅になったようです。
ちなみに、2世帯リノベーションを考えている人にアドバイスをするとしたら…?
「水回りや基本的な生活動線を世帯ごとに分けているので、お互いに気を遣わずに暮らせています。だけど、会いたいと思ったらすぐに会いに行ける距離感。これがとても心地いいです」と、ご夫婦は話します。
「自分たちの終の棲家を確保できた安心感が持てて、将来への不安が無くなりました。設計はデザイナーさんの提案に完全に乗っかった感じでしたが、住んでみると非常に満足度が高いです。私が気に入るものをどんどん提案してくれたし、コストダウンのための代替案も納得できるものだったし、私たちの潜在的な希望を汲み取ってくれた。すごいチカラですよね」、そう笑うご夫婦。
3世代にわたって住み継がれたこの土地と家も、とっても嬉しそうです。
Interview & text 安藤小百合