建具に欠かせない取っ手は、機能が優先されがちな部位です。
それでも、
リノベーションだからこそ、
オリジナルでつくり込むからこそ、
そこにもう一工夫加えたい。
私たちが大切にしているのは、
それがいかに”取手らしくないか”でもあります。

■意匠に溶け込む取っ手
一見すると、ただの横ライン。
ですが、周囲に設えた框組と揃えることで、
そのラインは建具全体の意匠に溶け込み、
どこが取っ手なのかを意識させません。
8箇所ある横ラインのうち、
実際に手をかける取っ手は、3箇所だけ。
それ以外の収納はプッシュラッチで開閉し、
ライン自体は機能を持たせていません。
あえて同じ意匠を揃えることで、
取っ手の位置を曖昧にし、
存在感を静かに整えています。
大切なのは、取っ手単体のかたちではなく、
それを取り巻くラインや面の整え方。
枠や建具との取り合いを揃え、
わずかな段差やズレを残さないこと。
そうした納まりの積み重ねが、
“取っ手らしさ”を消していきます。
■引き算が生む取っ手
手をかける要素を足す。
それだけが取っ手ではありません。

建具に切り込みを入れただけの、
無駄のない取っ手。
ただ細くするのではなく、
指先に心地のいい幅や形状であるかどうか、
日々の使用に耐えうる強度をどう確保するか。
そのバランスを探りながら、
素材や工法を選び、かたちにしていきます。
見えない部分の厚みや補強、
手に触れる断面の整え方。
その一つひとつが、使い心地を支えています。

■取っ手にも愛着を
格子デザインのパーティション。
その横竿をわずかに隆起させることで、
取っ手として機能させた事例があります。
ご入居後、お客様からこんな言葉をいただきました。
「慣れるまでは、夜中トイレに行く時に扉を手探りで探しました」
「最近は体が覚えてきて、歩数や体の感覚で扉の位置がわかるようになってきて。」

その変化の中には、
住まいとの距離が少しずつ近づいていくような、そんな気配を感じます。
取っ手は、単なる部品ではなく、
日々の動作の中で身体が触れる場所。
だからこそ、その一つひとつを丁寧に整えることが、
暮らしの心地よさにつながっていきます。
デザインを決めるのは、
長く触れ続けるそのかたちを、自然に受け入れられるかどうか。
そうした積み重ねが、家への愛着を静かに育んでいきます。