気品と遊び心
東京・調布市の落ち着いた住宅街にある大型マンション。この一室をリノベーションしたのは、人材会社でマーケティングに携わる夫・Tさん、アートディレクターの妻・Sさん、シュナウザー種の愛犬・せんまい君のご家族です。
以前は近隣の賃貸に住んでいましたが、更新のタイミングを迎え「いつか犬と暮らしたい」という思いが現実味を帯び始めたことで、マイホーム購入を決意。「引き続き賃貸も探してみたものの、ペット可で車を2台置ける物件はなかなか無くて…。それなら、思い切って購入するのもアリかなって」と、Sさんは振り返ります。そこで、職場のある都心へ出やすいことを第一条件に、幅広いエリアで物件探しを開始。新築戸建なども内見したものの、賃貸と変わらない画一的な間取りとデザインにときめくことはなかったと言います。
「それで、やっぱり好きな家をつくりたいと思って、中古リノベーションをすることにして。最初は他のリノベ会社に相談したものの、どうしてもしっくり来なかったんです」。
そんな中、Sさんがインスタグラムで見つけたのがnuリノベーション(以下nu)でした。「第一印象は、センスが良い。親しみやすいというよりは少し気品があって、それでいて遊び心もあって。その雰囲気が素敵だと思いましたね」と、Sさん。
早速nuに相談したところ、アドバイザーから紹介されたのは、意外にもそれまで暮らしていた街の物件。周辺環境まで丁寧に調べあげ、暮らし全体を見据えた提案をしてくれたおかげで、安心して購入できたと言います。
「アドバイザーさんは押し売りする感じが全くなかったし、話していて本当に建築が好きなことが伝わってきました。ご自身も自邸をリノベしていて、これは信頼できるなと。何より、とても真面目な人だったし、この人になら安心して任せられると思いました」と、頷くお二人。こうした安心感の中で、いよいよ設計打合せが始まりました。
感性を、色で編む
お二人が描いたのは、眺望を生かした気持ちのいいリビングでリラックスする暮らし。ナチュラルすぎない温かみのある内装と、二人分のワークスペース(WS)を確保した間取りを望んでいました。
そこでデザイナーは、20畳の広々リビング、緩やかに区切られたWS、プライバシー性の高い寝室がある、1LDK+WSの間取りを創出。オレンジのソファやヴィンテージ家具がマッチするように、深みのある木とブルーのカーペットを基調にしました。
キッチンは幅4mを超える壁付け型で、空間のアイコニックな存在に。キャビネットの扉には、「発色が良いものが好き」なSさんの感覚から、ピンクやイエローをランダムに配色。選び取った色を軸に、彩度や艶感、周囲を構成する木の深みまで、デザイナーが微細に調整しながら全体のバランスを組み立てました。隣室の洗面台もキッチンとひと続きになるデザインで造作して、伸びやかな一体感を生み出しています。
また、キッチンとLDの仕切り壁にはラワン材のリブパネルを採用し、上品なリズムを空間に添えました。

カラーだけでなく、扉のデザインや取っ手にも変化をつけ、遊び心を取り入れながらヴィンテージ家具のような品のある佇まいに仕上げた。

壊すことのできないPSはアールの壁で覆い、デザインとして昇華させた。

取っ手は、デザイナーが3Dプリンターを使うなどして検証を重ねたそう。
お二人のWSは、玄関土間を上がってすぐ、土間とひと続きの空間に3.7畳で配置。見せる収納と隠す収納をうまく使い分けたいというご要望から、廊下との仕切りに大型のオープンシェルフを造作し、仕事柄たくさんある本をしっかり収納できるようにしました。
「この本棚がめっちゃ良くて、お客さんも玄関を入った瞬間に驚いてくれます。自分は漫画が本当に多いんですけど、ここまでしっかり収まると思ってなかったですね」と、Tさんは頷きます。
寝室は、LDKの生活音から距離を取り、静かに休めるようWSの向かい側に配置。お互いに就寝時間が異なるため、寝室の入り口正面にヘッドボードを兼ねた仕切り壁を造作し、それぞれのベッド空間を左右に分けました。

廊下とWSを間仕切る、高さ2.3mの本棚。ブラウンとブルーで構成された空間が美しい。

デザイン書や漫画でぎっしり埋め尽くされた本棚に、ちらりと覗くかわいらしいオブジェ。
月1回以上キャンプに行くTさんがあこがれていたのは、広々とした玄関土間です。床は傷を気にせず使えるモルタルにして、キャンプチェアを置けるくらいの広さをしっかり確保。壁面にはキャンプギアを仕舞える収納と、60足以上ある靴が収まる可動棚も造作しました。
「キャンプ台車を土間にピットインして、そのままギアを仕舞えるのがいいですね。お皿は洗わずに持って帰ってくることもありますが、そのときもキッチンまでほぼ一直線で運びやすいし、動線がシームレスですごく便利ですよ」と、声を弾ませるTさん。
また、土間とWSの間にはカーテンレールを設置して、今後カーテンを付ければ空間を仕切れるようにしました。
こうして、多忙なお二人のONとOFFを快適に支える住まいが完成しました。

棚やカーテンで緩やかに仕切ったWS。閉じすぎず、開放感とフレキシブルさを残した。

梁の高さに合わせて造作した靴棚。棚板はWSの天板と揃え、天然素材・ファニチャーリノリウムを採用した。
暮らしの礎
この家に住んで1年4ヶ月。理想の暮らしの実現度は100点で、リノベによって自分好みの内装になったこと、賃貸の更新や次の家を考える必要が無くなったこともストレスフリーだと言います。
「この家が、私たちの暮らしの礎になりました。犬を飼ったことで、地域の飼い主さんとの交流も増えて、この地域に住む意味を感じられるようになっています。それに、とにかくこの家は居心地が良くて、ソファ、キャンプチェア、いろんな場所ですぐ寝ちゃいます。犬と同じような格好で床で寝ていることもありますし(笑)」と、Tさん。「家ではできるだけリラックスしたい」という、家づくり当初からの願いは、どうやら十分すぎるほど叶っているようです。
お気に入りのインテリアは、オレンジが鮮やかな<HAY>のソファ、<ルイス・ポールセン>のPH5、<セルジュ・ムーユ>の照明。経年美化でこっくりとした茶色が美しいヴィンテージのダイニングテーブルと、カイ・クリスチャンセンのウォールシェルフは、計画どおりブルーのカーペットにしっくり馴染んでいます。

夜のリビングの雰囲気が好きだというSさん。随所に配した間接照明が、夜ならではの心地よい空気をつくりだしている。

感性の赴くままに集めた、暮らしの中の小さなギャラリー。

年代も、素材や色も。異なるものが自由に混ざり合うLDK。その絶妙なバランスが心地いい。
「私は毎日在宅ワークなんですけど、居場所がたくさんあるので気分転換しやすいです。ベランダで風を感じたり、床で仮眠したりしていますね。明け方まで仕事することもありますが、リビングから朝日が見えると気分がいい。気持ちに余裕ができました」と、Sさん。
Tさんも、「キッチンで料理しているときが最高に至福。身長に合わせて少し高めに造作してもらったから、腰が痛くならなくてすごく快適で、『永遠に千切りしていたい』みたいな(笑)。それと、廊下のロングスパンが犬のボール投げにちょうど良くて、よく廊下で遊んでいます」と、満足そうです。
今後は、ダイニングチェアを買い足したり、土間とWSの間にカーテンを付けたりして、空間をアップデートしていきたいと言います。
「間違いなく、リノベは人生でやって良かったことの上位に入るんじゃないかな。こんなに理想を具現化してくれて、感動しています。これからリノベする人は、何でも希望を伝えたらいいですよ。うまくまとめてくれるし、可能な限り叶えてくれますから」。
Interview & text 安藤小百合


