夢を叶えるとき
海に程近い、見晴らしのいいマンション。その一室をリノベーションして暮らすのは、朗らかな雰囲気が印象的なAさん ご夫婦です。
住宅系ライターのお仕事をされている奥様は家への思いが人一倍強く、その根底には幼少期から抱き続けてきた家への憧 れがありました。
「実家には自分の部屋らしい部屋がなくて。学習机はあるけど母と同室だったし、物干しがあるバルコニーに繋がっていて父も母も頻繁に通る。プライバシーが守られる空間ではなくて、自分の部屋がある友人が羨ましかったです。その経験から“いつか自分 の家を持ちたい”と強く思っていました」。
そんな思いを胸に、ご結婚を機に新築マンションを購入。ですが、理想としていた暮らしとのギャップを感じ、7年ほどで手放してしまったそう。
「モデルルームしか見ていなかったので、実際の部屋に足を踏み入れた瞬間『あれ、なんか違う』って。建材は安っぽく 感じたし、施工精度もあまり高くない。住んでて全然気持ち良くなくて…」と奥様。
賃貸に移ってからも引っ越しを繰り返し、気付けば次が10回目の転居のタイミング。これが最後と、2度目の住宅購入 を決意しました。
「ライターとして素敵なお宅をたくさん見てきて、やっぱり私も自分らしい空間で暮らしたいという思いが強くなっていって。夫婦共に40歳を迎え、ローンを組むならそろそろ買わないとと話していたことも、物件購入に踏み切るきっかけになりました」。
そこで、奥様の仕事を通じて縁のあったnuリノベーション(以下、nu)に、物件探しから依頼。上層階で見晴らしもよく、アドバイザーからも背中を押された築26年・約75㎡の物件を購入しました。
その際のアドバイザーの立ち回りが、今も印象に残っているというお二人。
「内見中に、スッと姿をくらましたんです。いや、実際には横にいるんですけどね(笑)。『僕はここにいませんので、お二人でしっかり話してください』と言わんばかりに気配を消すんです。あれはすごい」と、ご主人。
「必要なことや、見落としているポイントはちゃんと教えてくれる。でも、最後は私たちが決めるまで黙って待っていてくれるんです。お人柄もあると思うけど、すごい寄り添い力だなって」。そう話しながら、顔を見合わせて微笑みます。
心が晴れる家
お二人が家に求めたのは、気分がパッと明るくなるような空間。
「グレーやベージュトーンの穏やかな雰囲気も素敵だけど、私の趣向には合わないと思って。間取りも“絶対にこれ”というイメージはなかったので、NG要素だけを明確に伝えて、あとはデザイナーさんにお任せしました」と、奥様。
ほっこりとした印象になりやすいフローリングやニュアンスカラーは避け、白とブルーを基調に、木をほんの少し加えるバランスに。物件の決め手にもなった気持ちのいい眺望を生かしたいという思いも伝えました。
そんな要望を受けてデザイナーが提案したコンセプトは、『空映』。
ブルーやピンクをアクセントに添えながら、ベースは極力シンプルに。そこへ時間や季節によって表情を変える空が彩りを重ね、暮らしが動き出すー。そんな空間を目指しました。

造り付けのベンチがあるおかげで、ソファを持たない暮らしを楽しんでいるというAさん。時にはダイニングテーブルをリビング側へ移動させ、一番景色のいい場所で食事を楽しむことも。

二人でワインを楽しんだり、横になってのんびり過ごしたり。様々なシーンで活躍しているそう。

白の正方形タイルを張り込んだキューブ型の台。タイルの角やベンチとの納まりなど、細部にこだわった。
幅3.3m超のベンチは、バルコニー側の端にタイル張りのキューブ台を造作。
空間がシンプルになりすぎないよう全体のバランスを見てデザイナーから提案したデザインで、「何を置いてもフォトジェニックなんです」と、嬉しそうに話す奥様。その言葉通り、LDKの中でもパッと目を惹く印象的な一角になっています。
ご主人が一番こだわったというキッチンは、大容量の収納や3口並びのIHコンロ、ワークトライアングルを意識した動線など、使い勝手も抜群。休日は料理が得意なご主人が夕食をつくり、夫婦でワインを楽しむのが日課になっているそう。
二人でキッチンに立つことも多く、当初はアイランドキッチンを希望していたAさんですが、デザイナーの「本当にアイランドにしますか?」という問いをきっかけにキッチンに求める条件を見つめ直し、L字型へ変更したといいます。
「壁に向かって料理する方が落ち着くなとか、この方が一番景色のいい方向を向いて食事ができるとか。私たちがしたい暮らしの本質を理解した上で提案し、背中を押してくれました。でも押し付ける感じはなくて、必要な時にズバッと言ってくれる。そのバランスがありがたかったです」と、奥様。

動線・収納・作業スペースの三拍子が揃ったL字キッチンは、使い勝手もメンテナンス性も抜群。

キッチンのブルータイルとデザインをリンクさせたいというリクエストから、洗面キャビネットにもブルーのラインをあしらった。
壁には鮮やかなブルータイルを採用。その中に一枚だけ忍ばせた犬モチーフのタイルはご主人のチョイスで、「どこかにオリジナリティを出したい」と取り入れました。
動物モチーフのアートや小物が数多く飾られたA邸。中には旅先で購入し、10年以上ともに過ごしてきたものも。そんな仲間がまた一つ増え、この家らしい風景が育まれています。
また、奥様の個室の入り口には斜めのラインを生かしたアートスペースを設けました。
はっきりとした色使いが特徴的な鈴木英人さんや永井博さんのアートが似合う家にしたいと思っていた奥様は、夜な夜なお酒を飲みながらどの作品を飾ろうかと思いを巡らせる時間が今の楽しみだそう。
シンプルだからこそ鮮やかなアートが映えるA邸。「その絵が飾られるまでこの家は未完成です」と、長年の思いを詰め込んだAさんの家づくりは、これからも少しずつ変化しながら続いていくようです。

スポットライトを取り付けたアートスペースは、造作ベンチの真正面。LDKのどこからも目に入る、印象的な空間に。

奥様のお母様から譲り受けたという約40年もののアアルトベース。A邸のカラーバランスにマッチする透き通るグリーンが美しい。
ずっと続いている物語
プレゼンテーションでプランを見た瞬間。完成検査で出来上がった空間を目にした瞬間。
家づくりが一歩進むたび、涙が出るくらい感動したという奥様。これまで仕事で訪れたリノベーション空間は300軒以上。そのたびに思い描いてきた自分自身のリノベーションが叶った喜びは、言葉では表せないほどのものだったそうです。
「私の中では、子供の頃からずっと続いてる物語だったんです。でも、なかなか実現するタイミングが訪れなくて。それが、いよいよ始まるんだ、ついにここで暮らせるんだ!って。素直に、心から嬉しかったですね」。
携わったスタッフの自然体な姿勢も、Aさんが思いを伝えやすかった理由の一つだったといい、「『お客様だから』みたいな感じではなく、『暮らしを愛する同士』としてリスペクトを持って向き合ってくれているなと感じて。皆さん、本当にこのお仕事が好きなんだなって、改めて思いました」と話します。

奥様の個室は、壁一面をメルローズ・アベニューのポール・スミスの外壁をイメージしたピンクで塗装。

ご主人の個室は濃ブルーのアクセントカラーを採用。棚にはぎっしりとCDが並ぶ。

自然光がたっぷりと差し込むLDKは、壁を斜めに建てることで広がりを演出。奥様こだわりの洗面スペースもガラス戸でつながり、好きな色、好きなデザインがいつでも視界に入る間取りに。
「やっと自分の家に帰ってきた」。そんな不思議な感覚すら覚えたという、この家での暮らし。
今までは、新しい家へ移るたびに体調を崩してしまうこともあったそうですが、自分たちの暮らしにぴったりと合わせてつくり上げたこの空間には、あっという間に体が馴染んでいったそう。
「心も体も健康になる感じですね。特に家事動線が快適で、本当にノンストレス。あと、私たちモノは多くないんですが捨てられないタイプなので、リノベを機に断捨離ができたことや、残したモノたちの居場所がちゃんと決まっていることも、暮らしていく上で心強いなって感じています」と、ご主人。
落ち着きがありながら、どこか心が弾む。そんな心地よい空気感で満たされたA邸。
澄み渡った空と大切なものに囲まれながら、Aさんの新しい1日が、今日もゆっくりと積み重なっていきます。


