納得を重ねた先に
横浜市のマンションに住むKさんは、会社員のご主人、2級建築士の奥様、4歳の長女の3人家族。以前は社宅に住んでいましたが、賃料を払い続けるより住宅を資産として持ちたいと考え、マイホーム取得を決めたと言います。
「娘に転校の負担をかけないためにも、小学校に上がる前には引っ越した方がいいと思っていて。そこがデッドラインでした」。
住まいに関心があるからこそ、新築ではなく、間取り・素材・設備を自由に選択できる中古リノベーションを検討していたという奥様。また、将来子どもが独立した後に夫婦二人では持て余す可能性、掃除やメンテナンスの負担を考慮して、戸建ではなくマンションを選択したそうです。
中古物件探しは都内も含め、2年弱かけて細く長く行いましたが、予算内に収めようとすると、広さ・立地・有事の際のハザード面などを妥協する必要があることに気づいたKさん。そこで新たに目を向けたのが、都内への通勤にも便利な神奈川県内の駅周辺エリアでした。
「同じ予算でも都内より広さに余裕が持てますし、駅近で再販性も期待できること、このエリアが大規模開発中であることから、資産性も高いと判断しました」と、ご主人。
nuリノベーション(以下nu)を知ったきっかけは、Instagram。ホームページの施工事例で工事費や家族構成まで紹介されていて、自分たちの理想や条件に置き換えてイメージしやすかったと言います。nuの完成見学会に参加しつつも、当初は別の設計士に相談していましたが、「やっぱりnuが忘れられない」と、最終的にはnuへの依頼を決めたそうです。
また、施工管理の経験を持つ奥様は、「現地調査のときも『ここは開けてみないと分かりません』といった不確定な部分や、既存配管による設計上の制約など、現実的なリスクも細かく教えてくれました。その上で、考えられる対応策まできちんと伝えてくれたので、すごく信頼できましたね」と、当時を振り返ります。
家族の救世主
Kさんが望んだのは、家族がゆったり集まれる広々としたLDK。平日は仕事で帰宅が遅いご主人が、心からくつろげる場所にすることでした。
「以前は、夜遅くに帰宅して早朝に出勤する生活が続いていて。雑然として狭い社宅では心身を休めにくく、気持ちが落ちたり、妻と衝突したりすることも多かったんです。休日もあまり家にいたくなくて外出することが多く、疲れが取れないまま週明けを迎えていて…」。
そんな切実な悩みを聞いたデザイナーは、K邸に“cotton(コットン)”というコンセプトを提案。仕事で疲れた心を、木や漆喰の柔らかな表情がそっと受け止める――。そんな思いが込められていました。「聞いた瞬間に、心を鷲掴みにされました。『このチームが自分たちを救ってくれる!』って」と、真剣な眼差しで話すご主人。こうして、K邸の設計打合せが始まりました。

やさしく包み込まれるような心地よさと、どこか凛とした佇まい。相反する魅力が、空間に自然と溶け合う。

料理中も家族との会話を楽しめる2列型キッチン。バックカウンターとワークデスクを一体的に造作し、限られた空間を有効に活用した。
間取りは2LDK+WIC。16畳のゆとりあるLDKには、天井にコーブ照明を仕込み、夜は落ち着いた光で過ごせるように。壁は漆喰、床はオーク材のフローリングで、自然素材の表情や素足で歩いたときの感触が気持ちを休ませてくれる空間に仕上げました。
「妻の実家が漆喰を使っていて、部屋に入った瞬間の空気の清々しさを感じていました。それでずっと自然素材への憧れがあって」と、ご主人も満足そうな表情を浮かべます。
リビングの一角には、障子で仕切った小さな居場所を設けました。ヌックのような隠れ家が欲しいというご要望から、入口の高さを少し抑えることでお篭もり感を演出。 現在は娘さんのプレイスペースとして活躍し、遊びに来たお友達にも紹介したくなるほど、お気に入りの場所になっているそうです。また、奥にはネットワーク機器やゲームなどを収納し、生活感が出やすい機器類をすっきりと隠しています。

障子とアール壁が織りなす、モダンな空間。造作した障子の繊細な意匠が、その美しさを引き立てる。

おもちゃの収納場所は、障子の内側に。子どもの遊び場と、すっきりとしたLDKを両立した。
キッチンは、シンクからリビングを見渡せる2列型で設計。木の面材が美しいキッチン本体に、傷が目立ちにくいバイブレーション仕上げのステンレス天板を合わせました。
「ステンレス天板とリンクするように、LDKのインテリアはシルバーの要素を取り入れています」と、奥様。ダイニングのゴールデンベル、ブラケットのAJウォール、ジョージ・ジェンセンの壁掛け時計…。お気に入りのインテリアを眺めつつ、家族で食事をしながら笑い合う時間が、何よりの至福だと言います。
一部の壁には大判のベージュタイルをあしらい、のびやかで落ち着いた雰囲気に。また、BOSCHの食洗機、冷蔵庫や家電を格納できる1.6畳のパントリーも設け、美しさと家事ラクを両立したキッチン空間に仕上げました。
こうして、素材・光・収納の一つひとつが家族の時間を柔らかく支える空間が完成しました。

パントリーの壁には、石の表情を繊細に再現したタイルを採用。シンプルな空間に静かなアクセントを添えて。

一枚板を使ったシンプルな飾り棚。固定金具を見せない端正な仕上がりが、オブジェを引き立たせる。
心まで整う暮らし
この家で暮らして約3カ月。コンセプト“cotton”の実現度を尋ねると、「純度100%!」と即答します。
家事動線を考え抜いた間取りと、モノの定位置を決めた収納計画のおかげで、日々の動きは格段にスムーズに。ご主人が「段取りの鬼」と評する奥様は、すでに新しいキッチンも使いこなしており、20分ほどで3~4品つくることもあるのだとか。
そして、特筆すべきは多忙なご主人の変化。思い切って朝は新幹線通勤にしたことで、満員電車のストレスから解放され、ドア・ツー・ドア約45分で会社に到着できるように。
「おかげで、起きた娘の顔を見てから出発できるようになりました。これは家族にとって大きな変化です」。
洗濯から着替えまでランドリースペース周辺で完結するため、朝の準備もスムーズに。寝室と生活空間を分けたことで、深夜に帰宅しても奥様と娘さんの眠りを妨げにくくなったそうです。
「互いに干渉したくない部分と一緒に過ごしたい部分が、家の中で自然に整理されている。余裕ができて、夫婦間の衝突もなくなりました」と、ご夫婦は微笑みます。

ステンレスのキッチン天板とシルバー系のインテリアが響き合うLDK。奥様が思い描いていた、統一感のある空間が実現した。

個性豊かなオブジェが、空間に彩りを添える。中には、奥様のご両親から結婚祝いに贈られた一品も。

洗面台はカウンターを全長2.5mとゆったり確保。家事もできる多目的なスペースに。
休日に娘さんと出かけても、夕方には家に帰ってくるというご主人。外で過ごす時間と同じくらい、家で過ごす時間も楽しみになったそうです。
「こうして暮らしてみると、夫婦で話し合ったことをちゃんと反映しつつ、デザイナーさんが微調整してくれたことが分かります。プロから見て必要なことはきっぱり言ってくれたし、そのバランス感覚がすごいですね。もちろん、予算の都合で調整した部分もありますが、出してくれた代替案が結果的に当初の案より良くて、妥協した感覚は一切ないんです」と、頷くご夫婦。
こうして、リノベーションが救世主となり、人生をガラリと好転させたKさんご家族。自分たちが心地よく暮らせる環境を、自ら考え、つくることの大切さを改めて教えてくれました。
Interview & text 安藤小百合



