nuスタッフの小西が、住まい手として、創り手として。
自宅リノベで気づいたことや、細部がもたらす心地よさを、全10話で綴っていきます。
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みなさま、こんにちは。
nu リノベーション(以下、nu)の小⻄です。
設計としてnuで働き始め、 次第に「自分自身も理想の暮らしを叶えたい」という思いが募り、 昨年春から冬にかけて自宅のリノベーションに踏み切りました。
▲昨年12月に竣工した我が家
現在は、夫と2歳の息子との3人暮らし。
小さな子どもがいても、暮らしやすさを大切にしながら、デザインにも妥協したくない。
nuで家づくりに携わってきた日々があったからこそ、“細部の質”が暮らしを左右することに気づきました。
nuでの家づくりを通して出会った、「ここは大事にしたい」と思う瞬間や、「こうすればもっと楽しくなる」という発見。
その感覚を、これからリノベーションをされる方や、いつかやってみたいと憧れる方に少しでも伝えたくて。
その思いが溢れ、人生で初めて企画書を書き、この「リノベ日記」を実現させました。
住まい手として、創り手として。
両方の視点から自宅リノベのアレコレを全 10 話で綴っていきます。
お茶を飲むような気持ちで、のんびりお付き合いいただけたら嬉しいです。
第一話となる今回は、私がどんなところに「デザインの楽しさ」や「リノベーションの楽しさ」を感じているのかを少しお話ししていきます。
nu で働いていると、必然的に「質を追求する」ことについて考える機会が増えていきます。
「質の高いもの」ってなんだろう。
単に高価なものでも、技術が優れているものではなく、私たちが本当に惹かれる「質の高いもの」とは、その背景にある「丁寧さ」や「こだわり」なのではないかと思います。
図面を引く日々の中で、自分の理想の暮らしを重ねながら見えてきたこと。
全てモノの形には理由があって、理由がわかると面白いし、「こうしたらもっと良くなるんじゃないか?」と考えるのはもっと楽しい。
たくさん考えて遠回りした後に、ストンと腑に落ちるシンプルな方法を見つけた時、デザインの本質的な楽しさに出会えるのだと気づきました。
・かたちの理由
先ほどお話ししたように、住宅の設計に限らず、日常で目にしているモノの形には必ず理由があります。
この連載を執筆している今、たまたまですがスタッキングできるカップとスツールを使っていました。
同じ形状のものを重ねられるように、カップは底がくびれていたり、スツールは脚が湾曲しています。
くびれや湾曲した形は、デザインとしての個性になるし、収納時に省スペースになるというような便利さも兼ねています。
少し日常から離れますが、今でも鮮明に覚えているのが高速道路のサービスエリアやパーキングエリアの駐車場。
車が斜めに停められるよう配置されているのは、出発時の進行方向を示し、逆走を防ぐためだそうです。
何気ない景色の中に隠れた理由を知った時、私は驚きとワクワクを感じました。
デザインって、つい派手なものばかりをイメージしてしまいがちですが、こういった日常の中に隠れているものが案外面白かったりします。
・遠回りの先にある小さな答え
「なぜこの形なのか」と理由を探し、さらに「自分ならどうデザインするか」を考える時間はとても楽しいものです。
大体は「ああでもない」「こうでもない」と、書いたり消したり。
遠回りしながら考えて、ふと一息ついた頃、スッと腑に落ちるシンプルな答えが浮かんだりします。
AI で何でもデザインできる時代だからこそ、こんなふうに脳みそで考えて、ようやく自分なりの答えを導き出す達成感は、デザインの本質的な喜びだと私は感じています。
・竣工は、はじまりにすぎない
自分で導き出したデザインの中で暮らし、日々の暮らしそのものを実験のように試行錯誤しながら、「もっと心地良くなる余地」を探す時間がとても楽しいです。

暮らしはじめてから、気づけば一年。
春の光を迎え、夏の熱気に向き合い、秋の風を通し、冬の冷たさに包まれる。
一巡する季節をこの家で過ごし、思い描いていた通りの喜びもあれば、予想もしなかった発見に驚かされることもありました。
その「予想外」については、また少しずつお話ししていければと思います。
暮らしを思い描きながら形づくったからこそ、今は日々の細部にまで愛着を覚え、愛おしい住まいとなりました。
デザインやインテリアに無縁だった夫も、今では植物や家具デザイナーを自ら調べるほど虜になっていて、我が家の楽しみは竣工以来ずっと継続しています。
竣工はゴールではなく、むしろ新しい楽しみのはじまり。
それこそがリノベーションの醍醐味なのかもしれません。
次回は、リノベーションをする決断に至ったきっかけを、自己紹介を兼ねてお話ししたいと思います。