
気持ちよく仕事できるワークスペースと、丁寧につくられた壁面本棚が主役の空間。細部まで美が宿る心地いい空間で、住まい手の新たな人生が生まれていました。
解像度高く
「最近、独身の友人が2人立て続けに家を買ったんです。その話を聞いていたら、私も家を買うことが現実味を帯びて来て。以前の賃貸はデザイナーズ物件だったので、それ以上素敵な物件を探すと賃料も高くなるだろうし、それならいっそ中古リノベで好きなようにつくりたいと思って」。
そう話すのは、クリエイティブ関係の仕事をしているTさん。以前から<北欧、暮らしの道具店>やインテリア雑誌を好んで見ており、掲載されている素敵なリノベーション住宅に惹かれていたと言います。試しに新築物件も見てみたものの、素材や色味などがしっくりこなかったのだとか。
「実は、nuリノベーション(以下nu)さんのホームページは2年くらい前からずっと見ていたんです。他の会社の事例を見ても、結局nuさんに戻る感じで(笑)。最近はnuさんのインスタグラムも見ていて、ずっといいなと思っていたんです」と、Tさん。積年の思いを胸に恵比寿のnuオフィスを訪ねましたが、正直その日は6割くらいの気持ちで、nuへの相談を皮切りに他のリノベーション会社も見てみようと思っていたと言います。
「でも結局、その日にnuさんに即決しました。私はこだわりが強いし、やりたいこともたくさんあったので、スタッフの皆さんと感覚やニュアンスを共有できたらいいなと思っていたのですが、すぐに『これはイケるぞ!』という直感があって。私の細かいニュアンスを解像度高く受け取ってもらえましたし、『もうそこまで分かってくれたんだ!』と感動しました」と、Tさん。
さらに会話を進めるうちに、タイルの目地の色などのディテールまでこだわることがnuのスタンダードだと感じ、この会社なら一緒に理想の家をつくれると確信。トントン拍子で話が進み、その場で中古物件探しまで進んだというから驚きです。リノベーションしやすい広さ、レトロすぎない外観、周辺環境の良さ、通勤アクセスが良い2路線の沿線という4つの条件のもと、その日は9軒の候補を選出。後日、そこから吟味した5軒をnuのアドバイザーと一緒に内見し、最終的にこの築41年、47.30㎡の物件を購入しました。
「アドバイザーさんが壁をコンコン叩いて構造上壊せるか確認してくれたり、そこでどんなリノベーションができるかアイデアを教えてくれたりして、イメージしやすかったです。こっちは舞い上がっているから冷静な判断ができないけれど、アドバイザーさんが『ここはやめたほうがいいですね』とか『ここはリノベするには狭いです』と、パシッとたしなめてくださったので助かりました(笑)」と、笑うTさん。こうして絶大な信頼の中で、憧れのリノベーションが始まりました。
言語化できないもの
仕事が大好きなTさんが望んだのは、暮らしの中心に仕事がある間取り。デザインは、2年前にフィンランド旅行に行ってから虜になった北欧テイストの雰囲気を希望しました。デザイナーはTさんとの初回ヒアリングを終え、Tさんの仕事に対する向き合い方や好きな空間の雰囲気など、目に見えない空気感を大切にするというニュアンスで『Atmosphere Design』というコンセプトを提案。言語化できないそれを見えるものに、暮らす場所へデザインしていく、という思いを込めました。
また、Tさん曰く「私はめちゃくちゃズボラなので(笑)」、家事をラクにできる動線と、ドカッと仕舞える“隠す収納”もマストだったそう。
そこで設計デザイナーは、1LDKでLD内にワークスペースがあり、その他にも作業できる場所が複数ある間取りを提案。キッチンスペース内にダイニングテーブルを配置し、その横にインナーテラスを含む広々ワークスペース、さらに隣接するリビングの窓辺にヌックがある間取りを提案しました。Tさんがすでに持っていたワークデスク・アルテック80Aを置く予定で空間の寸法を設計。リビングとキッチンを隔てる壁には木枠を回した腰窓を造作し、空間の連続性を生み出しました。
床の基本仕様には明るく淡い色彩のバーチフローリング、リビング部分にはベージュのカーペットを採用。「木材の質にはこだわりたかったので、バーチ材には惜しみなくコストをかけました」と、Tさんは話します。
ワークスペースの壁面には、床材と同じバーチ材で大型本棚を造作。本のサイズをすべて測り、本の上部に絶妙な余白が生まれるよう、棚板の幅を何度もシミュレーションしながら緻密に設計しました。本棚の下部は、仕事の資料や推し活グッズを仕舞える大型収納に。あえて床まで届かないデザインにすることで、空間に余白を生み出しました。
設計デザイナーが特にこだわった造作キッチンは、下部の「収納・食洗機・収納」を等間隔にすることで、見た目の美しさと使い勝手の良さを両立。壁面にはTさん希望の白の磁器質タイルにベージュの目地をあしらい、カップやオブジェを置く飾り棚も造作しました。さらにキッチンの横にパントリーを設け、冷蔵庫を含むすべての調理家電を“隠す収納”ができるように。出入り口のカーテンを閉めれば、生活感を完全にシャットアウトできます。
多忙なTさんの癒しの場である寝室は、床高を上げて入り口も狭くすることで洞窟のような空間に。入り口のロールスクリーンを閉めれば、一層おこもり感のある雰囲気になります。寝る前に読書をするというTさんのために、廊下側から見えない位置に小さい壁面本棚を造作。推しのグッズも飾れるので、推しを眺めながら夢心地で眠りにつけます。また、デッドスペースになる頭上の空間を活用して、布団収納棚も造作。季節ものの布団がすっぽり収まるサイズで、とても重宝していると言います。
その他、洗面室はドラム式洗濯機が収まるサイズで設計し、洗面台にはキッチンと同じ白タイルとベージュ目地を採用して統一感を創出。玄関土間はモルタル床で、洗練された印象に仕上げました。
心地いい空気
Tさんの暮らしの軌道に合った間取りと動線は家事効率を格段に上げていて、適材適所に設けた収納は使いやすさと片づけやすさを叶えています。仕事中の快適さも格段に上がったことで、ワークスタイルが大きく変化したのだとか。
「キッチンでコーヒーを淹れて、そのままワークスペースで仕事して。振り向けば本棚があるから、必要な資料もすぐ手に取れて最高に便利です。ランチはダイニングで食べて、気分転換したいときはヌックに移動して。家の中で簡単にスイッチの入れ替えができるのがいいですね。以前は、家にいると息が詰まるから毎日のように出社していたけど、今は一気に在宅率が上がりました。同僚からは『あいつ最近全然会社に来ないな』と思われていると思います(笑)」と、Tさんは笑います。
お気に入りのインテリアは、nuのインテリアスタイリングサービス<decoる>で購入した<Artek(アルテック)>の照明・ゴールデンベル、<飛騨産業>のダイニングテーブル&チェア、そして<レクリント>のフロアライト・スノードロップ。夜、スノードロップの灯りで読書する時間が最高に心地いいそうです。
ここでの新たな暮らしはTさんに思いもよらぬ影響を与えているそうで、価値観や人生観がガラリと変わったと言います。
「以前はすごく野心家で、とにかく仕事で手柄を上げたいと思っていました。でも、一つ大きなもの(この家)を手に入れた達成感で、そこまで仕事にガツガツしなくなったんです。リノベーションが本質に立ち還るきっかけになり、そもそも自分はどういうクリエイターでいたいのか、何を大事にしたいのか、それらを考え直しています。自分にとって良いタイミングでリノベーション出来て、今後の人生を豊かにできそうです」と、Tさんは頷きます。
デザイナーが提案してくれたという、床材の切り替え部にあしらった真鍮がお気に入りで、掃除機をかけているときに目に入ると嬉しくなるのだとか。仕事中インナーバルコニーのグリーンに日差しが当たっているのが目に入ったとき、特に幸せを感じると言います。
「nuさんは、比較対象がない唯一無二のリノベーション会社だと思います。営業・デザイン・施工、全てのセクションのスタッフが同じ感覚値でいてくれたのが良かったですし、丁寧な施工を見ると職人さんにもデザインの意図がちゃんと伝わっていたことが良く分かります。設計打合せ中も、変に気を遣って私に寄せた意見を言うのではなく、プロ目線の現実的な見解をハッキリ言ってもらえたので、住んでからもずっと満足度が高いですね」。
そう振り返るTさん。これからは、まだある余白を好きなもので埋めていきたいのだとか。心地いい空気の中での生活と、Tさんのより良い人生は、まだ始まったばかりです。
Interview & text 安藤小百合