
木の質感と光を丁寧に編み込んだ、上品な2LDK。夫婦の暮らしだけでなく、仕事や心身のリズムまで整えた、極上の空間とは。

信頼と納得
横浜市内の丘の上に立つ、重厚感のある大型マンション。この一室に住むHさんは、20年以上住宅業界のメディアに携わっているご主人と、アンティーク関連のECサイトを運営している奥様のご夫婦です。
仕事の関係で東京と大阪で別居生活を送っていましたが、ついに同居することを決め、物件探しを開始。奥様は10年以上前に大阪でフルリノベーションを経験しており、「今回も基本的には中古リノベにしたいなと。もし条件の都合で新築やリノベ済みの再販物件を買ったとしても、自分たちらしくプチリノベしたいと思っていました」と話します。
新居に求めた条件は明快で、風通しと日当たりが良いこと、窓から緑が見えること、加えて70~80㎡程度の広さがあることを重視しました。
物件探しは、都内から神奈川まで広範囲に。情報収集が得意な奥様がかなりの数をリサーチし、新築・中古ともに10軒以上を内見したと言います。
「正直、最近の新築は品質面で納得できないものが多かったですね。それと、本当は都内が理想でしたが、希望の広さを叶えようとすると予算を大幅にオーバーしてしまうことが分かって。どうせ同じくらいの価格を払うなら、しっかり造られた中古マンションをフルリノベーションした方が、満足度も生活の利便性も高くなると判断しました。もちろん、新築を買ってリノベしたら価格がより膨らむので、どの角度から考えても、中古リノベが賢いなって」と、ご主人は振り返ります。
結果的に購入したこの築23年・76.25㎡の物件は、周辺の電線が地中化されており、窓からの景観に余計なノイズが入り込まないことが決め手に。駅からも徒歩圏内で、街全体に緑が多いことも気に入ったポイントでした。
リノベーション会社は、なんとなくずっと探していたという奥様。「nuリノベーション(以下nu)さんは施工事例が多くて、実績に安心感がありました。私は住宅というよりも店舗っぽいデザインが好きなのですが、nuさんのデザインは都会的で、色んなテイストがありながらも統一感があるので、私のイメージと大きなブレがないだろうなと思いましたね」。
依頼を決定づけたのは、担当したアドバイザーの対応。物件探しをしていた当初、新築の部分的なリノベーションにも対応してもらえるかを確認した際、その誠実さに感激したそうです。
「『新築なら、こういうリノベができますよ』と丁寧に教えてくれて。規模に関わらずどんな選択にも寄り添ってくれてすごいなと感じました」と、奥様。購入したこのマンションの内見もアドバイザーに同行してもらったそうで、スピード勝負の内見予約、購入時の手続きなどもとにかく手早くやってくれて、終始助かったと言います。
こうして、信頼と納得感の中で設計打合せが始まりました。

深呼吸できる余白
Hさんが自邸に求めたのは、仕事とプライベートをきちんと切り分けられる空間。
特に奥様は、「夫婦ともにワーカホリックですし、私は仕事用の事務所に泊まることもあるので、家は心身を休める場所にしたかったですね。あと、切り花を生ける余裕のある暮らしにあこがれていました」と話します。
テイストは、つくり込みすぎないことを重視し、白・木・モルタルを組み合わせた清潔感のある空間をイメージ。モダンビンテージやアンティーク家具を置いても違和感のない、懐の深さを求めました。「フランスやイタリアというより、ベルリンの家がイメージ。新旧や国籍の異なるもの、そこに和の要素も混ざる感じが理想でした」と奥様。
間取りは、LDKとご主人のワークスペース、寝室、そしてWICを希望。生活スペースには海外のワンルームのように家具で空間をゾーニングできる広さと、壁が極力ない緩やかな回遊動線を求めました。ご主人は「僕は自宅で仕事をする時間が長いし、オンラインミーティングでは声を張ってしまうので、個室は必須。でも、一日中籠る部屋だから、閉塞感がない部屋を」とリクエストしました。
そこでデザイナーは、東のLDKから西の玄関へ風が抜ける空間を設計。天井や壁の凹凸を最小限に抑え、ノイズレスで端正な空間を追求しました。

LDKはたっぷり16.2畳を確保。躯体現しを白塗装した天井やグレーの塩ビタイルの床で、静かな印象にしました。リビングの一角には奥様のワークスペースを設け、腰壁とナラ材のヘリンボーン床で視覚的にゾーニング。かつてレコードショップを営んでいた奥様のレコードコレクションを1000枚以上収めるために、大型の壁面収納を造作しました。
キッチンは、物件購入の際に付いていた新品のキッチンを活かし、アイランド型に移設。背面一面にホワイトオークの大型シェルフを造作し、食器だけでなく生活用品なども収納できるようにしました。
このシェルフのデザインが秀逸だそうで、「デザイナーが抜けない梁にも同じオーク材を貼って、シェルフ全体が一枚板のように見えるようにしてくれたんです。このシームレス感、すごいアイデアですよね。見るたびに『マジでイケてる!』と思います(笑)」と、ご主人は目を輝かせます。
寝室は3.4畳とコンパクトながら、LDKと同素材でまとめ、隣にリビングへ抜けるウォークスルークローゼットを配置。
ご主人のワークスペースは5.6畳、無垢床と珪藻土の塗り壁で深く呼吸できる空間に。扉はガラスドアを採用し、廊下側には内窓を設置して、音は遮りつつ光と視線は通す設計にしました。また、寒がりのご主人の熱望で、この部屋にだけ床暖房を採用しました。
洗面室には横長の洗面カウンターを造作し、天井にハンガーパイプを2本付けて、洗濯後の洋服を干したり掛けたりできるように。玄関土間は廊下と段差のないフラットな設計にして、スーツケースの移動もラクにできるようにしました。

暮らしが整い、人生が整う
こうして、物件購入から入居まで約2年に及ぶプロジェクトが完了。念願の城に住み始めて約10ヶ月、夫婦には数々の変化が起きているそうで…。
「オンとオフの切り替えが、ものすごくしやすくなりました。事務所にいても、早く家に帰りたいと思います」と、奥様。ご主人も「家と設備が整ったことで、衣食住が一気に充実しました。朝晩に散歩をするようになったんですけど、緑の多い街並みの中で四季を感じられて、もう最高。春秋は窓を開け放つと驚くほど風が通り抜けて、ここは軽井沢? と思うくらい気持ちいいんですよ」と、笑います。
広いキッチンは、使い勝手抜群。奥様のつくる鶏スープがレストラン顔負けの美味しさで、一度にたくさん作れるように、ル・クルーゼの大きい鍋を買い足したのだとか。暮らしの変化は内面にも影響を与えていて、ご主人はランニングやトレーニングを始めたりするなど、健康意識が一気に高まりました。仕事の関係者から「表情が柔らかくなった」と言われることも増え、自邸を手に入れたことで事業を長く安定させていく意識も芽生えたそうです。奥様も心にゆとりが生まれ、四季の移ろいや窓からの光の入り方に目が向くようになったそう。
「朝ブラインドから光が差し込んだり、コンクリートの壁に光の陰影ができたりするのが、めちゃくちゃエモいです。リビングに余白を贅沢に持たせたのも、こういうことを楽しみたかったからなんですよ」と、ご夫婦。最後に、リノベの総括を伺うと…。
「やっぱり、好き勝手に考えて実現した空間だから、金額以上の価値を感じますね。家は買いたいときがタイミングだから、迷わず購入して良かったし、中古リノベにして大正解でした。これからリノベをする方には、早い段階でnuさんの完成見学会にたくさん行くことをおすすめします。やっぱり、写真で見るのと実物を見るのとでは違うし、『ここまでやり切ると、この価格なんだ』と分かって、参考になりますから。あとは、多少の予算オーバーは許容して、やりたいことは全部やり切った方がいいと思います」と、頷くご夫婦。
テーブルに飾った季節の切り花と二人の笑顔が、理想の実現度を教えてくれました。

Interview & text 安藤小百合