建築士夫婦の選択
夫婦ともに建築士のKさんご夫婦。奥様はオフィス内装のデザイン設計を手がける一方で、趣味の陶芸で個展を開くなど、ものづくりをライフワークとして楽しんでいます。
以前は都内にある約45㎡の賃貸で暮らしていましたが、徐々に手狭さを感じるようになり、マイホーム購入を考えるように。建売住宅や新築マンションといった完成された住まいは、最初から選択肢にはほとんどなかったそうです。
「既製品の家だと、どうしてもテンションが上がらない(笑)。設計の仕事をしていることもあって、自分たちの好きなようにつくりたい気持ちが強かったですね」と奥様。
一方で、ご主人は都心への通勤アクセスや資産価値といった現実的な視点も重視していましたが、都内かつ好立地となると、予算との折り合いがつかない。だからこそ、デザインへのこだわりと資産性を両立できる「中古マンション×リノベーション」の選択が、ご夫婦にとってベストアンサーだったと言います。
こうしていくつかのリノベーション会社を検討する中で見つけたのが、nuリノベーション(以下nu)のホームページでした。
「リノベって少しラフなイメージがあったけど、それは私たちの好みに合わないなと思っていて。でも、nuの洗練されたデザインはかなり好みだったし、職人の技を紹介するコラムまであって、施工に対する意識が高い会社だと感じて、いいなって」。
こうして、早速nuのアドバイザーと物件探しを開始。立地はもちろん、建物の安全性や信頼性にも目を向けながら4軒ほど内見したそうです。
「nuのアドバイザーさんは、物件のメリットだけでなく、リスクやデメリットまで丁寧に説明した上で、急かすことなくじっくり考えさせてくれました。私たち以上に親身になってくれたし、銀行とのやりとりの場面でもすごく頼もしかったです」。
透ける境界、ふたりの気配
Kさんご夫婦が望んだのは、家のどこにいてもゆるやかにつながり、互いの気配を感じられる暮らし。「夫がリビングでゲームをしていて、私がアトリエで陶芸をしていても、お互いの様子が分かる家にしたかった」と奥様。一方、睡眠中は静かに過ごせるよう、寝室は独立した個室を希望しました。
また、「仕事で様々なインテリアに触れるから、好みがコロコロ変わる」という奥様は、どんなテイストを置いても受け止められる、極力色を抑えたシンプルな内装を希望。さらに、建築のプロであるお二人は、入居後に自ら手を加えて楽しめる余白を残してほしいとリクエストしました。
そこでデザイナーは、この家に「土と石」というコンセプトを贈り、素材の質感を楽しむ無垢な空間をイメージ。間取りは1LDK+アトリエで設計しました。

窓からの光を受け、ガラスブロックが美しくきらめく。

唯一の個室はワークスペース兼寝室。壁面のデザインに合わせて扉も造作。

緩やかに仕切られた個室やアトリエ、リビングへと開けたキッチンなど。空間同士が心地よくつながったK邸。
LDKは、躯体現しに白塗装の天井・壁、程よく表情のあるグレーのタイル床を採用。壁面には、美術館の一角のような壁一面の大型ニッチ棚を造作し、奥様曰く「何を置いてもそれっぽくキマる」ステージを創出しました。
デザイナーの提案で、カーテンレールは窓の上部ではなく天井際に設置し、カーテンが天井から垂れ下がるように。カーテンの柔らかい質感が壁一面に広がり、空間に上質さをもたらします。
キッチンはリビングを見渡せるL字型で、一辺はキッチン台、もう一辺は作業カウンターに。前壁には陶器のような質感の白タイルをあしらい、作家ものの器が映える飾り棚も造作しました。カーテンで目隠しできるパントリーも設け、冷蔵庫と調理家電を仕舞えるように。こうして、生活感を感じさせないキッチン空間が生まれました。

陶芸を嗜む奥様が集めた土や石にまつわる書籍や、ご主人のベアブリックコレクションなどをディスプレイ。

ワントーンカラーでまとめたキッチンに、タイルの質感がさりげないアクセントを添える。
奥様のアトリエは、ガラスブロックでリビングと隔て、光と気配は透過する半個室に。電動ろくろや電気窯、作品を乾かす棚を備え、趣味の域を超えた機能的なアトリエにしました。アトリエの隣に位置する寝室兼ご主人のワークスペースにも、ガラスブロックを採用。奥様のアトリエとの境はガラス壁にして、視線はつながりながらも音は遮る設計に。WICは1.7畳ながら洋服や荷物をまとめて収納できる機能的なスペースとし、玄関土間はスーツケースも収まるSICに設計。玄関の床は、奥様の「昔ながらの住宅でよく見ていて、好きだった」という割石敷きにして、料亭のような趣を添えました。こうして、素材の質感を生かした、上質な住まいが実現しました。

リビングの一角にありながら、ほどよく籠もれるアトリエ。家族の気配と、自分だけの時間が心地よく共存する。

割石の不規則な形と陰影が、静かなリズムを生み出す。正面の壁には、オブジェを飾るためのニッチを設けた。
心地よさの積み重ね
この家に住んで1年10ヶ月。ご夫婦がまず実感したのは、日々の小さな心地よさの積み重ねでした。
「朝起きたときに見える家の中の眺めが良くて、毎朝テンションが上がります。家から駅へのアクセスも良くなったし、嬉しいポイントがたくさんありますね」。
設計当初に思い描いていた“互いの気配を感じられる暮らし”も想像以上に実現したそうで、「互いの気配を感じすぎちゃうくらい(笑)。理想の実現度は100点を狙っていたけど、実際は120点くらいです」と、奥様は笑います。
ご主人も、好きなインテリアを気兼ねなく選べるようになったそうで、ダイニングテーブルは、オランダの<moooi>で購入した脚に、自ら塗装した天板を組み合わせました。その後も洗面やトイレの収納棚をご自身の感性を生かして制作。もともとそこにあったかのように、住まいにしっくりと馴染んでいます。

リノベーションを機に新調したアルフレックスのソファや、カッシーナのダイニングチェアなど名作家具が並ぶ。

洗面にもデザイナーズ照明を。下部には、Kさん自身でリブパネルの収納を設けた。

植物もアートのように愉しむ、ギャラリーのような一角。鉢選びにもこだわりが光る。
家で過ごす時間にも変化が。以前は外出することが多かったお二人ですが、今は家で過ごす時間が増えたそうです。
「旅行の宿選びも変わりました。この家の居心地が良すぎるから、それを凌駕する高級な宿か、寝るだけの安い宿のどちらかですね(笑)」と、ご夫婦。
暮らすほどに家への愛着が深まり、生活の質も高まっているそうで、「次は何を置こうかな、何をつくろうかなって、妄想がはかどります(笑)。nuの皆さんは何を言っても受け止めてくれたし、入居後のアフターフォローも手厚くやってくれているので、nuに頼んで本当に良かったです」。
住まいは完成した瞬間がゴールではなく、暮らしながら少しずつ育てていくもの。その楽しみを、Kさんが教えてくれました。
Interview & text 安藤小百合


