「好きな街で、好きなものに囲まれて暮らしたい!」そんな想いからご夫妻がたどり着いたリノベーションという選択肢。ラフな素材で構成された空間に、お2人の好きなカラーであるネイビーや白を散りばめた1LDKプランです。
2回目はマイホーム
東京都目黒区。都立大学駅から10分ほど歩いた閑静な住宅街にY夫妻のお宅はあります。Y夫妻はイタリアンのシェフのご主人とアパレル関係にお勤めの奥様の2人暮らし。以前はご主人の勤務地に近かった二子玉川の賃貸に約3年住んでいたというお2人。家を買おうと話を持ちかけたのはご主人の方からで、「30代に入ってから年齢的にそろそろ家を買いたいと考えていたこともあって、この先も賃貸で家賃を払い続けていくことに勿体無さを感じていました。そこで改めて生活を見直そうと思ったことがきっかけです。」と話す。最初は新築、中古に関わらず予算に合う物件を探していましたが、内見していくうちに決まり切った間取りや新築のピカピカとした真新しさが自分たち好みではないと感じていったと言います。そんな時、奥様が読んでいた雑誌でリノベーションの特集記事を見つけ、「リノベーションという言葉自体は知っていましたが、ここまで自由に空間をデザインできることは知りませんでした。ライフスタイルに合わせた間取りや好きな素材を組み合わせて作り込むことができたり、そういう良さを知ってから家を買うなら絶対にリノベーションしたい!と考えるようになりました。」とY夫妻。その雑誌にリノベーション会社の紹介ページがあったのですが、施工事例などを見て一番自分たちと雰囲気が合うと感じたのがnuだった言うお2人。それからしばらくして、たまたま休日に広尾を訪れていたY夫妻は「せっかく近くまできているから実際に詳しい話を聞いてみたい!」とnuに連絡を取り、その日の内に相談会に参加。「物件探しからトータルでお願いできる点が良いなぁと感じました。その方が安心だし、主人と休みを合わせることが難しいので1つの窓口で全てお願いできる方が打ち合わせがスームーズにすすめられそうだなと思ったんです。」と奥様。すぐにnuに依頼することを決め、物件探しを開始します。お2人がアドバイザーに伝えた条件は、都立大学駅近辺で60平前後の広さ、日当たりが良い物件であること。その中でも特に重視していたのがエリアで、「家を買うなら自分たちの好きな街で暮らしたいと思っていました。実は独身時代に碑文谷に住んでいたことがあって、昔懐かしい商店街があったり都心に近いのに静かで落ち着いた都立大学周辺の雰囲気がとても気に入っていたんです。だから家を買うならこのエリアに住みたい!とずっと考えていました。」とご主人。そして都立大学が最寄りの物件を3件内見したのち、最も魅力的だったのが今の碑文谷のお住まい。「日当たりが良い物件が良かったので、角部屋で2面採光を確保できる点が嬉しかったです。内見時には部屋だけじゃなくてマンションの周りも自分たちで実際に歩いてみたんですが、近くに大型スーパーがあったり、将来子供ができた時のことを考えたら近くに幼稚園や学校があることも魅力的で。充実した周辺環境も大きな決め手となりました。」とY夫妻。思い入れのある場所で築40年、約53平米の物件を購入しました。
「好きな色」を散りばめて
「取り入れたいポイントはありましたが、〇〇テイストにしたいとか空間全体としての具体的な要望はあまりなくて。最終的にこういうラフな雰囲気の空間に仕上がったのも、デザイナーさんが私たちの雰囲気や気持ちを汲み取って提案してくれたからなんです。」とY夫妻。デザイン打合せが始まってからは、主にネットで検索した画像をデザイナーに見せて話をすすめていきます。「ネイビーや白、茶色が好きだったので、その色を空間に取り入れたいと話しました。あと、2人とも洋服や靴が多いので、それらを仕舞える広い土間は必須でした。」とご主人。また、新築のようなピカピカとした雰囲気があまり好みではなかったため、壁や天井の一部を躯体現しにするなどリノベーションでしか創り上げることができないような空間をオーダー。そんなY夫妻にデザイナーが提案したのは『BLUNT』というコンセプトでした。BLUNT(ブラント)とは、髪の毛先をザックリ切りっぱなし風にしてラフ感を演出するカット方法を意味します。そんな風合いを出すために木やコンクリートなどの素材を採用し、素材本来の良さを生かした味わいのあるラフな空間をイメージしました。そうして完成した1LDKのプランは、まず玄関扉を開けるとコンクリートブロックを積み重ねた壁が出現。これはオープンな洗面スペースの目隠しの役割を担っていて、入り口からザックリとした印象を感じさせます。実験用シンクを取り付けシンプルに仕上げた洗面は、洗面ボウルが大きく水はねが気にならないのも嬉しいポイントです。玄関右手には奥行きのある土間があり、2人分の洋服や靴を十分に仕舞うことのできるスペースを確保しました。「帰ってきたら居室に入る前にまずアウターを仕舞って、そのまま手を洗う。そういう効率的な動線を確保したかったので、土間に服を収納できる場所を作って、洗面も玄関付近のオープンな場所に配置してもらいました。」と奥様。その先に続くLDKはネイビーの扉や白い壁などご主人が好きな色をバランスよく散りばめました。特に下部だけがネイビーに塗られた梁はとても象徴的で、「nuの施工事例に梁の下の部分だけ塗装している事例があって、アクセントにもなるし良いなぁと思って取り入れました。」と話します。床には明るめに塗装したオークの無垢材を敷き、あえて節目の目立つ幅広のものを採用。好きな色や素材を組み合わせて選べる点が、新築にはないリノベーションならではの魅力です。一際目を惹く爽やかな白タイルが印象的なキッチンは、何社ものショールームに足を運び、NORITZのオーブンレンジ付きのものを選定。キッチン本体は既製品を使い、そのまわりをオリジナルの腰壁で覆いました。「マットな質感の白タイルを馬貼り(上下のタイルをずらして貼っていく方法)で貼ってもらいました。ピカピカとしたタイルよりマット素材の方がこの空間には馴染むと思ったので。目地をグレーにしたのも私のこだわりです!」と奥様。基本的に料理を振る舞うのは奥様で、「職業がシェフなので料理をするのは好きなんですが、プライベートではほとんどしないですね。家庭の味が食べたいので!(笑)なのでキッチンまわりの事は奥さん主体で決めてもらいました。」とご主人。ネイビーと白の塗装が施されたリビングのクローゼットは、元々あった収納に広さを足して造作。収納ひとつとっても、扉の大きさやデザインは時間をかけて決めていき、出番の多い日用品などはここに仕舞って人目に触れる場所に物があふれ出ないよう工夫を凝らしているのだとか。リビングにソファを置いていないのもクッションなら必要に応じてサッと片すことができるからで、座り心地の良いクッションの上で寛ぐのがお2人のいつものスタイルなのだそう。コンクリートのグレー、梁に塗装したネイビー、フローリングの明るいブラウン、そしてアクセントのホワイト…。お2人の寛げるカラーでまとめたYさんテイストの家が完成しました。
居心地の良さを感じる時
Y邸に飾られたアートやポストカードの数々は、白壁に映えるカラフルな色使いのものが多い。「自分で集めたものもありますが、アパレル関係に勤める友人が多いので展示会に招いてもらった時にいただいたポストカードなどを飾っています。」とご主人。リノベーション後は休日を家で過ごすことも増えたのだとか。お互いに仕事が忙しく、月に一度休みが重なれば良い方だというお2人は「いつも2人で良い家だね!なんて笑いながら話しています(笑)仕事が忙しいからこそ、家の居心地の良さって重要だと思うんですよ。今の家は周辺環境も含めて本当に気に入っていて、毎日早く家に帰りたい!って思いながら家路を急いでいます。」とにっこり。晴れた日には窓から東京タワーが望めるそうで、これからはバルコニーで過ごす時間も楽しみたい!と教えてくれました。思い入れのある街で、好きな色や素材を取り入れたオリジナルティ溢れる家に暮らすお2人を見ていると、「好きな街で、好きなものに囲まれて暮らす」ということがリノベーションの最大の良さだと改めて気づかされました。快い爽やかな空気がながれるY邸。そこには気取らずに過ごすことのできる、つくり込み過ぎないラフ空間が広がっていました。